世界の高校生が物理の実力を競う第48回国際物理オリンピック(IPhO 2017、国際物理五輪)が7月17日から23日までインドネシアで開催され、日本代表として高校生5人が参加。2人が金メダルを、3人が銀メダルを獲得した。渡邉明大君(奈良・東大寺学園高校3年)は高校1年次から3年連続の金メダル。総合成績で世界1位の参加者に贈られる「Absolute Winner」に輝いた。いずれも日本選手初の快挙だ。文部科学省と物理オリンピック日本委員会が23日、発表した。

国際物理オリンピック日本代表の5人。左から氏野道統君、小宮山智浩君、中江優介君、吉見光祐君、渡邉明大君(7月15日に東京理科大学で開かれた結団式=前田黎撮影)

 

86カ国・地域から395人が参加

大会は、各国から選抜された高校生らに物理への興味と能力を高めてもらい、国際交流を図るのが目的で、毎年開催される。20歳未満で大学教育などを受けていない生徒が対象で、参加は各国5人まで。今回は世界86カ国・地域から395人が参加し、理論問題、実験問題に各5時間をかけて挑んだ。今回は金メダルが64人に、銀メダルが72人に、銅メダルが102人に与えられた。

吉見君も金メダル、氏野君、小宮山君、中江君が銀メダル

金メダルを獲得したのは、渡邉君と吉見光祐君(兵庫・灘高校2年)。銀メダルを獲得したのは、氏野道統君(大阪星光学院高校2年)、小宮山智浩君(埼玉県立大宮高校3年)、中江優介君(大阪府立北野高校3年)の3人。吉見君は昨年の大会で銀メダルを受賞しており、2年連続のメダル獲得だ。

3年連続金の渡邉君、大会前には「全力で楽しむ」

渡邉明大君(2015年撮影)

3年連続金メダルの渡邉君は、総合成績と実験成績で1位となり「Absolute Winner」を受賞した。高校1年次に初めて金メダルを獲得した後の高校生新聞の取材に「せっかく物理を勉強していたので、腕試しとして予選に挑戦しました。代表に選ばれてからも、学校の勉強との両立が大変で、1週間に1度は辞めたいと思っていました(笑)」と話していた。今大会前の結団式では「(国際物理オリンピックのための)研修を3年間受けました。過去の研修で得た知識や経験、教訓を生かして、最後のIPhOを全力で楽しんできたいと思います」と語り、3年間支えてくれた人たちへの感謝を述べていた。

2022年大会は日本で開催

日本代表は、昨年の国内大会「全国物理コンテスト『物理チャレンジ』」(参加申込者1851人)の成績優秀者から候補が選ばれ、研修合宿と最終試験を経て決定した。来年はポルトガルで開催される。22年の第53回国際物理オリンピックは日本で開催される。

日本代表生徒の決意は

大会前の7月15日に東京理科大学で開かれた結団式での、渡邉君以外の4人の決意表明は次の通り。

氏野道統君「今まで勉強してきたことを存分に発揮して、最後まで諦めず、ベストを尽くしたいと思います。国際的な場でもあるので、海外の選手との交流も大切にしていきたいです」

小宮山智浩君「長い間目標にしていた国際物理オリンピックに出場でき、うれしく思います。本番では学んできたことを十分に生かすとともに、海外の選手とも話したり、情報を共有したりしたいです」

中江優介君「もし物理オリンピックという存在がなければ、そして代表になっていなければ、高3の夏をここまでどきどき、わくわくした気持ちで過ごしていることもなかったと思います。今回の国際大会でできる限り結果を残し、みなさまにも感謝の気持ちが伝えたいです」

吉見光祐君「慣れない海外で試験を受けるというのは、同じ形式でも日本で受けるものとは得られるものが違うと思うので、雰囲気を満喫しながら、最善を尽くしたいです。また、物理に対する視野を広げ、将来につないでいけるような経験ができればいいなと思います」

小宮山君は高校生新聞の取材に「物理オリンピックは座学よりも深いところを知ることができたと感じる。学んだことを大学での学びにも生かしたい」とも話した。今後、物理オリンピックを目指す高校生には「物理オリンピックの課題は難しいと感じるかもしれないが、高校物理の基礎知識の積み重ねで実力がつき、問題が解けるようになる。その学びから、物理学を楽しんでほしいと思う」とアドバイスしてくれた。