東京外国語大学は12月7日、一般入試の個別試験でコンピューターを使った英語のスピーキング試験を導入する方針を明らかにした。英国の国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルと共同で開発する。19年度入試から一部学部で始め、21年度入試から全学部の受験生約2000人に課すことを目指すという。実現すれば大学入試では例のない規模の「話す力」を測る試験になるとみられる。他大学の利用も視野に入れており、英語4技能の測定を模索する「大学入試の英語に一石を投じるプロジェクト」(立石博高学長)になりそうだ。(西健太郎)
既存の英語4技能試験「入試に合わず」
大学入試の英語をめぐっては、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を測るため、英検やTOEFLなど民間の資格・検定試験の成績を利用する動きが広がりつつある。文部科学省もセンター試験の後継となる大学入学共通テストにスピーキング試験を導入する検討をしていたが、独自の実施は見送り、大学入試センターが認定した民間試験の結果を利用する方針を決めている。
一方、東京外大の個別試験の英語では、従来から「話す」以外の3技能を出題しており、加えてスピーキング試験の導入を検討していた。しかし、対面での試験は技術的に難しく、既存の民間試験の利用も検討したものの▽入試日程に合わせた実施が難しい▽入試目的に作られていない▽スピーキングだけの採用が難しい▽段階別評価だと1点を争う合否判定に使いづらい、といった難点があったという。こうした課題をクリアする新たなテストの共同開発で同大とブリティッシュ・カウンシルは合意した。
12分で11問、コンピューター上で解答
新テストの名称は「BCT-S」(British Council-TUFS Speaking test for Japanese Universities)。ブリティッシュ・カウンシルが企業や教育機関などに向けて実施している英語力評価試験「Aptis(アプティス)」をもとに、日本の学習指導要領をふまえ、高校生が受けるのに適した大学入試用のスピーキング試験を開発する。試験は12分間。コンピューター上で出題される11の質問に答え、録音をトレーニングを受けた採点者が評価する。成績は得点と段階別(CEFR=ヨーロッパ言語共通参照枠)の2種類で提供され、最短3日で結果が出る。「評価項目や採点基準を公表しているので、高校でも準備しやすい」(ブリティッシュ・カウンシルの安田智恵試験部長)という。
19年度に新学部で導入、21年度に全学実施目指す
東京外大は19年度に新学部「国際日本学部」(仮称)を開設する計画。「BCT-S」はまず、19年2月にある新学部の一般入試(定員35人)で始める。受験生は他の科目の試験に続き、学内のパソコンで同時に受けるという。20年度入試も同様に実施したうえで、21年度入試で全学部での実施を目指す。受験人数は約2000人と想定され、タブレット端末などの利用も検討しているという。
他大学への拡大も視野
国立大学協会は21年度入試(20年度に実施)から大学入学共通テストのマーク式の英語試験と、入試センターによる認定を受けた英語民間試験の両方を受験生に課す方針を申し合わせている。「BCT-S」は、共通テストの認定の申請を考えていないといい、大学の個別試験のためのテストという位置づけだ。東京外大では、「(民間試験は入試の合否判定には使いづらいという)同じ悩みはいろんな大学が抱えている」(林佳世子副学長)とみており、「BCT-S」を他大での個別試験にも使ってもらいたい考えだ。
同大は、19年度入試で国際日本学部を志願する高校生に向けて、オープンキャンパスなどで「BCT-S」を体験受験してもらう考え。テストの研究開発を進める根岸雅史教授は「言語や文化への関心のある受験生を想定した、東京外国語大らしいテストにしたい」と話している。