【2021年1月3日、情報を更新しました】約30年続いた大学入試センター試験が廃止され、2021年1月から新テスト「大学入学共通テスト」が始まる。文部科学省は記述式問題を導入し、英語民間試験の成績を入試に利用する新たな仕組みを設ける予定だったが、制度の不備から共に取りやめた。結局、何が変わるのか。ポイントをQ&A形式でまとめた。

Q なぜセンター試験が廃止されたの?

A 1990年に始まったセンター試験は、マークシート式でありながら、「暗記だけでは解けない、考えさせる設問がある」と高校の先生の間での評価が高かった。だが、国は「先行きが予想しづらいこれからの社会では、知識の量だけでなく、自ら問題を発見し、答えや新しい価値を生み出す力が重要になる」という考えから、思考力や判断力、表現力をより重視した新しいテストに衣替えする方針を決めた。

大学入学共通テストの時間割

Q 記述式問題の出題が検討されていたけど?

A 文科省は、大学入学共通テストでは、マークシート式(選択式)に加え、国語と数学の一部に記述式の試験を導入する方針を決めていた。英語はマーク式のテストも当面残しつつ、20年度から民間の検定試験を国が認定し、成績を入試に使う新たな仕組みを始める計画だった。しかし、ともに制度への不備や不安が多く指摘され、試験まで1年余りだった2019年度に文科省は実施見送りを決めた。

もともとの方針では、国語は、マークシート式とは別の大問を設け、80~120文字程度を書かせる問題を含め小問3問を出題するはずだった。記述式は論理的な文章(評論文)か実用的な文章のどちらか、またはこれかを組み合わせた文章から出題される予定だった(マーク式は古文・漢文も含めて出題)。文科省は、「大学や社会生活で必要な問題発見・解決能力を評価することが重要」としていた。記述式の出題は取りやめたものの、これまで出題されてこなかった「実用的な文章」が出題される可能性がある。プレテストなどでは、生徒会規約や学校新聞を題材とした出題や、契約書を題材にした出題もあった。

一方、数学は、「数学Ⅰ」の範囲で記述式の小問3問が出題されるはずだった。こちらも取りやめになったが、試験時間はセンター試験より10分延びて70分となる。

Q 記述式はなぜ取りやめに?

A 文科省が新テストの方針を示して以来、課題は多く指摘されていた。記述式問題の採点作業は大学入試センターが民間企業に委託する方針だったが、50万人以上が志願する共通テストで、公平に採点できるのか不安視する声が高校側から多く出た。受験生が正確に自己採点したうえで出願できないことを不安視する声もあった。

 

文部科学省の「高大接続システム改革会議」。左から2人目が安西祐一郎座長(2016年3月撮影)

Q 結局何か変わるの?

A マークシート式の問題構成や出題方針が変わる。大学入試センターは、出題の方法を工夫して、より「思考力・判断力」が必要なテストになると説明している。

授業で生徒が学習する場面や,社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面,資料やデータ等を基に考察する場面などの場面設定を重視するという。実際、プレテストでは、学校での探究学習や実験を題材にした問題や、会話形式の問題文が多くみられた。

Q 英語の資格・検定試験はどう利用するはずだった?

A 文科省は、受験生に高校3年の4~12月に英検やGTECなど民間の資格・検定の中から国が認定した試験を受けてもらう考えだった。センター試験で測ってきた「読む」「聴く」に加え、「話す」「書く」を含む「4技能」を評価するためだという。録音機器を使って共通テストでスピーキングなどの試験を実施することも検討したが、約50万人が受験する試験での実施は不可能と判断したようだ。しかし、実施が迫った2019年11月に入り、政府は一転して20年度からの実施を延期することを決めた。制度に対して高校や受験生から不安が多く寄せられ、文科省側も不安解消のための対応を十分できなかったためだ。

Q 英語の民間試験を使うことが検討されていたけど?

A 文部科学省はもともとは、英検やGTECといった、いわゆる英語4技能を測る民間試験を入試に活用する仕組みをつくり、大学入学共通テストとあわせて導入する方針だった。共通テストでの独自の英語の試験を数年後にとりやめる方針も検討していた。しかし、民間試験の利用は、異なる試験の成績を入試の合否判定に利用しづらいことや、民間試験の受検や準備に、経済的な負担や地域による格差が出る恐れが高校側などから指摘され、20年度に方針を撤回した。

2017年11月には大学入学共通テストの試行調査が全国の高校・中等教育学校1889校で行われた

Q 共通テストの英語の出題は変わるの?

A センター試験から大きく変わる。センター試験は筆記(200点)とリスニング(50点)に分けて出題されていたのが、リーディング(100点)とリスニング(100点)の出題となる。読解とリスニングを1:1とする配点となり、これまでより聴き取りの力を重視する姿勢をみせている。ただ、各大学は、選抜に使う配点を独自に設定できるので、受ける大学によっては、1:1の配点比率になるとは限らない。

英語の出題内容も変わる。リーディングでは、センター試験で出題されていたような発音・アクセント問題や語句整序問題が出題されなくなる。こうした問題はスピーキングやライティングの力を間接的に測る出題とされたが、共通テストでは読解問題だけになる。単に文章を読むだけではなく、資料を読み解くことが求められる出題もありそうだ。

リスニングでは、これまで英語の読み上げ回数が2回だったのを、問題によって1回読みと2回読みが混在するようになる。生徒の身近な暮らしや社会生活を題材にした出題を中心にする方針だ。

高校生新聞オンラインでは、大学入試特集ページで、大学入学共通テストの問題・正解・分析を試験当日の夜から速報します。