筑波大学附属高校(東京)の「桐陰祭」(9月7・8日開催)で、3年4組39人が文化祭定番の食品販売のハイテク化に挑戦。客自身が機器を操作して、商品オーダーを可能にした「自動注文機」を自作した。(文・写真 中田宗孝)
装飾を施したテントの中では、3年4組の販売する「生姜焼きパン」の注文が相次いでいた。訪れた客たちは、2台設置した筐体の画面を次々にタッチ。この筐体の正体は、なんと高校生が自作した「自動注文機」だ。開発者の齋藤遼太郎君は、「手作りの筐体の中にはiPadを設置しています。iPadには、お客さんに自動注文を促す自作アプリを実装させているんです」と話す。
自作の注文機で効率化
生姜焼きパンの注文を完了させると、自動注文機から注文番号などを印字したレシートが発行される。店頭に設置した大型モニターで「調理中」「お呼び出し中(商品完成)」の番号をそれぞれ表示。自分のレシート番号が調理中からお呼び出し中の表示に変わると、出来たての生姜焼きパンを受け取れる流れだ。
普段、ファーストフード店などで何気なく利用する注文システムだが、高校文化祭の食品販売における自作の注文機の導入は画期的な試み。「従来の文化祭の食品販売を変えてみたかった。僕らは電子技術を用いて、食品販売法のハイテク化に取り組んだんです」(齋藤君)
クラス全員がスマホで販売状況を把握
「レストランのように、注文数などを一元管理しています。この方法にすると、抜かりなく安全」と齋藤君。販売面の大部分をシステム管理することで、注文数の聞き間違い、伝達ミスといった販売スタッフ間のトラブル発生を無くした。
齋藤君と同じ「売り方工夫班」の石井千温君は、販売スタッフ用の商品管理システムを構築した。各自のスマホから、石井君開発のWEBシステムに簡単にアクセスでき、生姜焼きパンの注文・販売数、調理状況といった情報をクラス全員がリアルタイムで共有できる。「調理担当者が生姜焼きパンの調理完了を知らせたり、接客担当者がお客さんに商品の受け渡し完了を報告したりするのも、このWEBシステム上で行っています」(齋藤君)
カツオだしが隠し味
メニュー開発は、秋山ひなたさんが担当した。調理師の母親から助言をもらいながら、生姜焼きパンの味を追求。「クラスの誰が作っても、味の品質を保った生姜焼きを作れるかが課題でした」。ボイルした豚肉にタレを付け、スリット入りのパンに挟めば出来上がる手軽な調理法も考案。「彩りと風味を演出する青のりを添えました。豚肉の旨味が増すカツオだしを使用したのはこだわりの部分です!」(秋山さん)。2日間の文化祭で900人以上に「自動注文機」を操作してオーダーしてもらい、生姜焼きパン1070個を販売した。
3年4組のお店は、創作ダンスや合唱発表などで盛りあがる野外ステージの近くに位置した。ステージ企画の中には、クラスメートや担任の曽根典夫先生が出演する場面も。すると、接客サービスをしながら、調理の手を忙しなく動かしながら、ステージ上で奮闘する先生や仲間たちに向けて「イエーイ!」と大声援を届けていた。クラス替えのない3年間をともに過ごしてきた4組の絆が“本気で楽しむ文化祭”でも垣間みえた。