2019年のノーベル化学賞に決まった吉野彰さんは高校時代から化学が得意だったという。京都大学工学部では石油化学を専攻する一方、同好会で考古学の発掘や研究にも打ち込んだ。大手化学メーカー旭化成でリチウムイオン電池の開発という独創的な成果をあげた。科学で活躍したい高校生へのアドバイスを聞いた。
手つかずの「宝物」まだいっぱい
10月10日、日本化学会で開かれた記者会見で、将来大学での研究や企業で研究開発に取り組みたい高校生へのアドバイスを尋ねると、吉野さんは「サイエンスが相当進歩して、(研究が)やりつくされたという閉塞感が若者にはあるのではないか。でも、実際には自然界で起きていることで我々人類が理解できているのは、1%か2%しかない。つまり、残り99%が手つかずで残っている。進化で何が起こっているのか、宇宙で何が起こっているのか。生命の原理。わからんことがいっぱいある」と語る。
だから「手つかずの宝物がいっぱいまだ残っているんだよ」と伝えたいという。「(手つかずの分野で)自分で仮説を立てて、実現する手段を自分で見つけた人は、宝物を、ノーベル賞をもらえます。そういう(研究の)ネタが世の中にいっぱい残っていることが強く訴えたいですね」
得意分野と広い教養を
そのために必要なことは2つあるという。「ずば抜けて得意なことは絶対必要です。将来の武器になります」。ただそれだけでは足りず、「広い分野で関心を持ち続けること」も大切という。「この2つがつながると、自分の得意分野の中で誰もが考えられない独創的なアイデアが出てくる」と強調する。「今の高校生にはまずは自分の得意なものを決めて、できるだけ広い教養をみにつけて、そうすると宝物が出てくると伝えたいですね」