全国高校総体(インターハイ)陸上の男子400メートルリレー決勝が2019年8月6日に沖縄県沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで行われ、中京大中京(愛知)が39秒91の大会新記録。インターハイでは史上2校目となる39秒台をマークし、31年ぶり3回目の高校日本一をつかんだ。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

「チーム全員で優勝できた」

チームあるいは個人が胸の内に抱えた悔しさを原動力にバトンをつないだ。

 

1年前のインターハイでは、0秒02差で決勝進出を逃した。そのときと同じ1走を担った竹内大和(3年)は「あれから日本一だけを目指して走ってきた」と話す。昨年に続き3走に入った神谷翔矢(3年)はそれに加えて、前日の男子走り幅跳びでわずか1センチ差で入賞を逃し、9位に終わったことを悔やんでいた。決勝の直前に行われた女子400リレーで中京大中京が2位だったことを含め、「悔しさすべてをエネルギーに変えて、チーム全員で優勝できた」と胸を張る。

2走の富田大智(3年)も個人種目で辛酸をなめた。初日の400メートルで4位と頂点には届かず、「だからこそ『四継』にかける思いは強くなった」と振り返る。

アンカーを務めた河田航典(2年)など、チームのリレーメンバーは7人。日頃から「ショートスプリント、ロングスプリントと細かく分けずに、短距離の選手はみんなで、すべての練習の基本としてリレー練習を行っている」(竹内)。その成果はここ一番という大舞台でいかんなく発揮された。

秋に高校記録狙いたい

初日の予選では2走に鈴木大河(2年)が入ったが、綻びを見せることなく、40秒44で全体の2位。5日に行われた準決勝は40秒06と全体のトップと、チームの調子は上向きだった。迎えた決勝では、さらに精度を高めたバトンパスを披露。竹内が「2走へのバトンは練習のときから今までにないくらい良いバトン渡しができていて、それをレースでもできた」と語れば、神谷も「練習のときに少し詰まっていたので、歩数を少し伸ばしたらピッタリうまくいった」と納得の表情。富田は「3走に渡した時点で『これは勝ったな』と確信した」と笑う。

3人の3年生がつないだバトンを託された河田は落ち着いていた。「4走は強い選手が多いので、力まないように焦らず走りました。とくに60メートルぐらいまではベストな走りができました」

 

しかし、最高の結果を手に入れても、一人として100パーセントの満足感は得られていない。「自分たちの頭には、39秒57の高校記録があった。このチームで秋シーズンにも走れるチャンスがあるので、そこで高校記録を更新することを目標にやっていきたいです」。竹内の言葉には勝者だけが持つ力強さがあった。