全国高校総体(インターハイ)陸上の女子100メートル決勝が2019年8月5日に沖縄県沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで行われ、前回覇者の御家瀬緑(北海道・恵庭北3年)が11秒51(向かい風0.1メートル)で優勝。史上9人目の大会2連覇を果たした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
4月の織田記念で高校歴代2位タイの11秒54をマークし、6月の日本選手権では高校生として29年ぶりに栄冠をつかんだ。持ちタイムでも実績の面でも優勝候補筆頭の御家瀬だったが、必ずしも圧倒的優位ではなかったあたりに、今大会における女子100メートルのレベルの高さがうかがえた。
三浦由奈(宮城・柴田3年)、青山華依(大阪・大阪2年)、石堂陽奈(北海道・立命館慶祥2年)、景山咲穗(千葉・市船橋3年)と、11秒6台を持つライバルがひしめき、御家瀬を含めた5人全員が高校歴代10傑に名を連ねていたのだ。しかし、「日本選手権で勝ったことは意識しなかった」と振り返るように、女王に過度なプレッシャーや気負いはなく、むしろ1本1本のレースを楽しんでいるようにさえ見えた。
自身が「今大会で一番良い走りができた」と振り返ったのは、今季日本人最速タイムとなる11秒50(追い風1.0メートル)をマークした準決勝だった。「ずっと課題にして取り組んできた」というスタートが決まると、「日本選手権までは中盤からキープしていた走りを今大会では中盤からの伸びを意識した」と、直前の組で三浦が打ち立てた大会新記録(11秒61)をすぐさま塗り替えた。
次の目標は高校記録「楽しく走りたい」
決勝では、小学生の頃から同じクラブでしのぎを削ってきた左のレーンの石堂がスタートから飛び出した。御家瀬は「自分のスタートも悪くなかったので、後半も落ち着いてレースができました」と話したように、少しずつ差を詰め、70メートルあたりで逆転。最後は100分の5秒差で競り勝った。「やっぱり負けられないという気持ちもありました」と笑顔で語ったが、ともに北海道勢のワンツーを遂げた石堂には、レース直後、「来年は優勝してほしい」と伝えたという。
インターハイ連覇という偉業を果たした御家瀬の次なる目標は、高校記録(11秒43)の更新。常々口にしている「楽しく走りたい」という思いを胸に、未踏の11秒4台の領域へと突入していく。