鮮やかな色彩で独創的な油絵を描く鈴木一世君(本人提供)

鈴木一世君(宮城・東北生活文化大学高校3年)は、校内外で精力的に芸術活動を行う高校生画家だ。「毎日何かしらの絵を描き上げてから幼稚園に行くほど、幼いころから筆を握っていました」と振り返る。

高校生になると、「独立展」(独立美術協会主催)に出品した絵が2年連続「入選」。受賞作は国立新美術館に展示された。3月には宮城県内のギャラリーで、約20点の絵画作品を展示した初の個展を6日間にわたり開催した。

訪れた来場者たちに自作の絵を丁寧に解説した。「僕の絵を個々の解釈で評価するのも自由。加えて、画家がどんな思いを込めて描いたのかを伝えることで、鑑賞者と画家、それぞれの絵の解釈や感性が重なり合い、新たな世界が生まれる。それが楽しい」

平日は約3~4時間、休日になると約8時間を費やしてキャンバスと向き合う。高校入学後からは油絵に特化した創作を始めた。

「抽象絵画と写実絵画の中間のような、絶妙なバランスの絵を描きたいと考えていたんです。自分が追い求めていた絵をもっとも再現できるマテリアル(素材)が油絵。仕上がりの重厚感、広がりを感じる深い色味も気に入りました」

政治や社会問題がモチーフ

絵のモチーフとなるのは、自身の琴線に触れた政治や社会問題など。「それに自分の解釈を織りまぜ、絵で表現するのが自分のスタイル」。個展でも展示した、約2カ月かけた力作「DARANI」(縦97×横194センチ)は、日本画をテーマに描いた。「屏風絵のように仕上げました。絵の中には、独自解釈した日本の仏教、空想上の神様や妖(あやかし)などを描きました。色の三原色(青緑、赤紫、黄)を多用するのも僕の絵の特徴です」

鈴木君の作品「DARANI」

多くの作品内に「顔のようなもの」を描き、その目の中にも作品テーマに奥行きをもらたす絵を加える。「『鈴木一世の油絵といえば』となるような、シンボル的な意図を込めて描いているんです」

現在は、9月に開催する東京での個展を目指して制作に追われる。すべて新作の約15点の油絵を展示する予定だという。将来の夢は世界を股に掛けるプロの画家だ。鈴木君は、「僕の発表する絵が人々の心に残り、それが世界を変えることができれば。そんな気持ちで絵を描いていきます」と、大きなビジョンを描いている。(中田宗孝)

鈴木君が描いた自画像