「教員」と一口に言っても、小学校・中学校・高校といった学校の種類の違いにより、仕事内容や求められる役割は異なる。進路選択に当たり、どのような違いを知っておけばよいのかを、東京学芸大学副学長の佐々木幸寿教授に聞いた。(安永美穂)

 

小学校は「見守り育てる」

――小・中・高校の先生の仕事内容の違いは?

小学校は学級担任制で、音楽や図工などは専科の先生が教えることもありますが、基本的に担任が1人で全ての教科を教えます。子どもに対しては、「見守り育てる」という姿勢が基本になります。

中学校は教科担任制になり、学級担任と教科担任が協力してクラス運営を行います。思春期の生徒たちは心身ともに大きく変化する時期なので、先生はその変化を受け止めながらコミュニケーションをとっていく必要があります。

高校になると先生の役割分担がさらに細かくなり、理科なら物理・化学・生物・地学という科目ごとに別々の先生が教えることになります。高校には、進学指導に重点を置く学校、就職希望の生徒が多い学校、工業・農業・商業といった専門高校など多種多様な学校があり、どの学校で教えるかによって先生に求められる仕事も全く違ってきます。

中学からは部活指導も

――具体的な働き方の違いは?

小学校の先生は、朝から「帰りの会」まで子どもにほぼ付きっきりで過ごし、放課後になってから自分の仕事をするのが一般的です。土曜日に授業がある場合を除き、基本的に土日は休みになります。

中学校は、1日のうち1~2時間は自分の授業がなく、その時間を自分の仕事や他の業務に充てられます。ただし、部活動の指導があり、土日にも練習や大会の引率などの仕事が入ることがあります。

高校は、1日のうち2~3時間は空き時間があり、教材研究や進路指導・生活指導などの受け持ちの仕事をします。中学校に比べると教員の配置が多く、部活指導も分担しやすい傾向があるようです。

発達段階に応じて教える

――やりがいや求められる資質は?

小学校は自分の学級の子どもの学習面・生活面の全てを見るという点で責任重大ですが、その分、やりがいもあります。また、小学校では子どもだけではなく、保護者とのコミュニケーションにも気を配る必要があるのが特徴です。

中学校は、生徒たちの学力差が広がり始め、不登校なども増える傾向にあります。そのため、先生たちは明確なルールを示し、チームとして協力しながらさまざまな問題に対処していく必要があります。先生自身の人間力が問われる場面が多いといえるでしょう。

高校は、就職や進学といった卒業後の「出口」を見据えた指導を行います。生徒一人一人の進路選択に寄り添い、人生の次のステージへ送り出すというのは、高校の教員ならではのやりがいです。

具体的な将来像を描こう

――選ぶときの注意点は?

先生になったときに、子どもとどう向き合いたいのかをイメージすることが重要です。「子どもと密接に関わりたい」と考える人は、小学校では歓迎されても、自立を目指す段階にある高校の生徒には「余計なお世話」と思われるかもしれません。逆に、高校では多様な教師像が受け入れられますが、丁寧な対応が求められる小学校では、人と距離をおいて接するタイプの先生が自分の良さを発揮することは難しいでしょう。

中学・高校の教員免許を取得できる学部は教育学部以外にもありますが、小学校の教員になるには免許取得が可能な大学・学部に進む必要があります。小・中・高校のどの教員が自分に向いているのかをよく考えて志望大学を決めることをお勧めします。

 

佐々木幸寿教授 (東京学芸大学副学長)

ささき・こうじゅ 水沢高校(岩手)、東北大学経済学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専攻は学校法学、教育行政学。岩手県内の公立高校で地歴・公民を教え、野球部の監督も務める。岩手県教育委員会に勤務した後、信州大学准教授、東京学芸大学准教授、教授を経て現職。