興南高校(沖縄)俳句部の桃原(とうばる)康平君(2年)は、今夏に行われた第21回俳句甲子園(松山青年会議所など主催)で、個人の部最優秀賞(文部科学大臣賞)に輝いた。俳句の魅力は何かを聞いた。(中田宗孝)
始めて2カ月で日本一
俳句甲子園は、高校生が5人一組で出場し、自作の俳句の出来栄えや鑑賞力を競う大会。桃原君の受賞句は「滴(したた)りや方舟(はこぶね)に似てあなたの手」。1280句の中から選ばれた。全国大会での兼題(主催側から事前に知らされるお題)「滴り」に対して詠んだ。「『滴り』と聞いて、動きのある水滴の情景を表した句にしようと意識しました。そして、岩肌を伝い落ちるような水滴のイメージが浮かび、その水滴を受け止める両手が方舟の形に似ていると感じたんです」
受賞は「思いもしなかった」という。まさに青天のへきれきだった。実は桃原君、大会2カ月前から本格的に俳句を始めたばかりだ。
伝えたい情景、あえて隠す
現在10人で活動する同部は、月2回の「句会」で外部の指導者からの添削を受けながら、さまざまな句を詠んで腕を磨いている。桃原君は、同学年の部員が全員同じ中学校出身だったこともあり、気軽な気持ちで句会を見学。「その時は、五・七・五の文字数で何が表現できるんだと思ったのが本音です(笑)。ですが、たった17音で奥深く表現された句があることを知り、すぐに俳句の面白さに気付き、入部を決めました」
自身の句を上達させるのは「多作多捨(たくさん俳句を作って多くを捨て、自信の句を残すこと)と、ひねくれた視点」と話す。「自分が伝えたい情景を丁寧に表現せず、あえて言葉の中に隠して、聞き手の想像に委ねることも大切。そんな駆け引きも俳句の魅力です」
「ひねくれた視点」を養うためには、感性を磨く必要があるという。趣味の映画や音楽鑑賞で培った感性を俳句作りに生かしている。「例えば『ゲスの極み乙女。』の楽曲の独特な歌詞を使った句を作ってみるとか。映画作品のテーマや、気に入った歌詞の一部を俳句に取り入れてみるんです」
最近詠んだお気に入りの一句は「大都市を逆しまにして天の川」。ツイッターで夜景の写真を見かけて浮かんだ。「大都市の夜景は、ビルの明かりでまばゆい。ですが、上空の星は見えない。だから景色を逆さまにして星空にしてみました」