東北大学は12月5日、国が進める大学入試改革が本格化する2021年度学部一般入試(2020年度に実施)の方針を明らかにした。改革の「目玉」ともいえる英語の民間試験(外部試験)の受検は求めず、国語の記述式問題の成績を点数化しての利用も見送る。国立大学協会の指針と異なる独自の方針だ。
英語民間試験「公平公正な扱いを損ねる」
21年度入試からは、国が認定した英語4技能を測る民間試験の結果を大学入試センターが取りまとめて各大学に提供する仕組みが始まる。国立大学協会は、民間試験の一定の成績を出願資格とするか成績を点数化して選抜に利用することを基本とする指針をまとめている。だが、東北大は「英語4技能の修得を重視」し、外国語学習の国際規格である「CEFR」で「A2レベル以上の能力を備えていることが望ましい」という「出願基準」を示しながらも、民間試験の受検や結果提出を「出願要件」として求めることはしない。
東北大はその理由として、「英語認定試験については、公平公正な受検体制の整備や成績評価などに関しこれまでに様々な問題が指摘されて」おり、「現時点ではこれらの問題が解決する見通しが立っていない」ことを挙げた。大学で高校に調査したところ、英語の民間試験を一律に受験生に課すことに対し賛成は8%にとどまり、反対が4割に達したという。これらのことから、21年度入試で民間試験を合否判定に利用することは「無理があり、逆に受験生の公平公正な扱いを損ねる恐れがある」と結論づけている。22年度入試以降については英語民間試験の問題の解消や高校の状況を考慮して検討するという。
国語記述式「不公平な扱いとなる恐れ」
21年度入試からは、現行の大学入試センター試験にかわり新たに「大学入学共通テスト」が始まる。国語と数学の一部に記述式解答を求める問題が出題されるのが大きな変更点だ。記述式問題の成績は5段階で評価される見通し。国立大学協会の指針では、記述式の段階別評価を国語の点数の2割程度の配点として選抜に活用することを求めている。これに対し、東北大は原則として記述式問題の段階別評価を点数化して合否判定に使うことはしない。
その理由として、「思考力・表現力は重要」としながら大学独自の試験で高度な記述式問題を出題していることや、「(段階式評価を)点数化した場合の点数の開きが本来の成績差を合理的に反映したものとは考えられず、受験生の不公平な扱いとなる恐れ」を指摘した。ただし、合否ラインに志願者が同点で並んだ場合のみ、記述式の成績が高い人を優先して合格させるという。
一方、数学の記述式問題の成績(マーク式と同様に点数化)は選抜に利用する。
「主体性」確かめるチェックリストを導入
21年度入試からは、国が各大学に「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」などを評価するように求めている。東北大は、志願者自身に5項目程度のチェックリストにチェックしてもらう自己申告制度をとる方針も明らかにした。チェックの根拠は調査書により確認するとしているが、調査書の記述は「根拠になる事項が簡潔に記述」されていればよく、記述量の多さは評価しないという。
東北大は、主体性などの評価のために「志願者、高校および大学それぞれに加重な負担がかかることは避けなければなりません」「主体性評価を過剰に意識した活動が学校内外で増え、本来の学校教育活動が妨げられることがあってはなりません」と説明している。
大学入試改革、対応分かれる
21年度からの大学入試改革をめぐっては、国立大学協会が足並みをそろえた対応を目指していたが、東京大が英語4技能の力を求めつつも、民間試験の受検を必須とせず、調査書の記述などで英語力を証明することも認める方針を決めるなど、各大学の対応が分かれつつある。