早稲田大学の田中愛治総長が11月5日に就任した。田中総長は記者会見で、鎌田薫前総長の任期中の2012年に策定された中長期計画を継承する考えを示しつつ、優先順位の明確化や数値目標の見直しを理事会で検討する方針を表明した。学部学生を2032年に12年比で2割少ない3万5千人に削減する計画については、削減幅を圧縮する考えだ。

就任記者会見に臨む早稲田大学の田中愛治新総長(2018年11月5日)

早稲田大学は2012年に32年までの中長期計画「Waseda Vision 150」を定めた。田中総長はこの計画の実現のために「優先順位を明確にし、数値目標を見直して現実的なものにする」と表明。学生数については、学部学生(12年に約4万4千人)を32年までに3万5千人に削減する一方で、大学院生(12年に約9千人)を1万5千人に増やすとしていたが、田中総長は「大学院生を1万5千人に増やすには、現在4千人の文系大学院生を1万人に増やす計算になるが、(採用で文系の大学院教育を重視しない)企業が変わらないと難しい。私はアメリカ(の大学)を熟知しているが、(大学院教育について)ただ真似をするのは危険」と指摘し、目標数を減らす方針を明らかにした。一方で、学部学生を32年に3万5千人に減らす計画については「少なすぎる。4万人は必要」と会見後に話し、削減幅を見直す考えだ。

田中総長は就任会見で「40年後には世界トップクラスの大学になるという決意と覚悟をもつ」と強調。「答えのない問題に挑戦する『たくましい知性』と、異なる性別、国籍、言語、宗教、信条、価値観を持つ人々に敬意をもって接し、理解する『しなやかな感性』を育てたい」などと抱負を語った。

田中総長は1951年生まれ。私立武蔵高校を卒業後、早稲田大学政治経済学部に入学。学部卒業後米国に渡り、オハイオ州立大学で政治学博士(Ph.D.)を取得した。青山学院大学教授などを経て1998年から早稲田大学政治経済学部教授、2010年から4年間教務担当理事。14年から2年間、世界政治学会会長を務めた。(西健太郎)