全国高校総体(インターハイ)陸上の男子110メートル障害決勝が8月6日に三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で行われ、阿部龍斗(福岡・福岡大大濠3年)が14秒09(追い風1.6メートル)の自己ベストで、悲願だった全国制覇を成し遂げた。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
ロケットスタートに加え後半も強化
3年前の全国中学校大会は2位。高校でも昨年のインターハイ5位、日本ユース選手権4位など、全国の舞台での頂点が届きそうで届かなかった。だが、最後のインターハイを前に、阿部は「調子も良いし、必ず勝てる」と自信をみなぎらせていた。顧問の宮口亜矢先生からは、いつも「決勝でスタートラインに立ったときに、『自分はここまで人一倍練習してきた。だから絶対負けない』と思えるように練習しなさい」と言われていたという。実際、この大会のために必死に練習してきたという自負もあった。
阿部の持ち味は、「全国でも誰にも負けない」と絶対的な自信を持つロケットスタート。ただ、それだけでは勝てないと、この1年は別の部分のレベルアップにも励んできた。「去年までは前半でうまく加速できても、後半で伸びずに抜かれることが多かった。そこで今年からは後半の局面の強化と、ブレが多かったハードリングを改善するために、先生が作ってくれた体幹トレーニングやウエイトのメニューを取り組んできました」
「決勝ですべての力を出し切る」
練習の成果は、午前中の予選でいきなり花開いた。自己ベストに0秒03に迫る14秒26(追い風0.9メートル)で全体の2位。準決勝ではタイムが伸びず、全体の7位通過にとどまったが、「予選から準決勝の間にアップをしすぎて、レースでは疲労が残ったままだった」と原因はわかっていた。そこで決勝までの時間は体力温存に努めた。「(アップで)ハードルは飛ばず、スパイクも履かず、シューズだけで流して走るくらいにして、最後の決勝本番ですべての力を出し切ろうと思っていました」
決勝では抜群のスタートで飛び出した阿部に対し、持ちタイムでは阿部を上回る久保田太一(兵庫・社3年)と飯塚魁晟(静岡・日大三島3年)が猛追。最後は3人が並ぶようにゴールしたが、優勝のアナウンスで名前をコールされたのは阿部だった。
「よく見えなくて、(勝利したという)確信はありませんでした。でも、頑張った自分なら絶対に勝てると思っていたので、1位になれて本当にうれしいです。今後は国体や日本ジュニア選手権も残っているので、今回の結果をしっかりつなげていきたいと思います」