全国高校総体(インターハイ)陸上の女子100メートル決勝が8月3日に三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で行われ、御家瀬緑(北海道・恵庭北2年)が11秒74(風0.0メートル)で初優勝に輝いた。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
準決勝は3位、「集中することだけ考えた」
6月の北海道大会でマークした11秒63(追い風0.9メートル)は高校歴代6位。その10日後の日本選手権でもシニアの選手と堂々と渡り合って4位に食い込むなど、御家瀬は今大会の優勝候補筆頭に挙げられていた。
しかし、予選を1位で難なく通過した後の準決勝はまさかの3位。「走り自体はそれなりにできたという感触でした」と話したが、北関東大会を制した鈴木一葉(埼玉・埼玉栄2年)に0秒01及ばず、南関東覇者の景山咲穂(千葉・市船橋2年)には同タイムながら着順で先行された。上位2人とは僅差ではあったが、タイムで拾われて決勝進出を決めたという現実は、御家瀬の心に「不安」というネガティブな要素を生んでしまう。準決勝から決勝までは2時間弱しかない。「無心で、ただ集中することだけを考えて決勝に合わせました」と振り返る。
「勝たないといけない」プライドも
迎えた大一番で、御家瀬は〝自分の走り〟を披露した。御家瀬の走りとは「中盤からの加速をしっかりしていくことで、後半につながり、ゴールまでスピードが落ちないように走ること」。準決勝の結果から決勝を左端の2レーンに入れたのも、御家瀬にとって幸いだったかもしれない。「(自分の左には誰もいない)レーンだったので、周りを気にしないで自分の走りができました」
同学年を中心に実力者がひしめき、圧勝とまではいかなかったものの、好スタートを切ると、景山らとの際どい勝負に競り勝った。
「不安な部分もありましたが、決勝でしっかり勝てて本当にうれしいです」と感極まって涙を見せた御家瀬。それと同時に、「この世代では勝たないといけないという責任もある」とプライドをのぞかせた。「目標タイムには全然届かなかったので、そこは悔しい部分でもありますが、それでも1位という結果には満足しています」
400メートルリレーでは恵庭北の大黒柱であり、翌4日に控える走り幅跳びも、昨年の国体少年Bで優勝するなど、上位候補に名を連ねる。〝高校女子最速〟の称号を手にしても、御家瀬の挑戦はまだまだ終わらない。