全国高校総体(インターハイ)陸上の男子100メートル決勝が8月3日に三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で行われ、昨年2位の塚本ジャスティン惇平(東京・城西3年)が10秒43(向かい風0.3メートル)の好タイムで、悲願の初優勝をつかんだ。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

インターハイ陸上男子100メートルで優勝した塚本ジャスティン惇平(左から2人目)

故障に悩まされた高校生活

塚本の高校での競技生活は、常に故障が付きまとっていた印象がある。昨年のインターハイでは100メートルで2位に食い込み、高いポテンシャルの一端を披露したものの、その後の1600メートルリレーで右膝を故障。秋の国体でも100メートルの準決勝で肉離れを起こし、決勝には進めなかった。

高校生活最後となる今季も、気持ちと走りがうまくかみ合わないことが続いた。

「6月のアジア・ジュニア選手権は違和感が出て、満足できるような走りはできず、U20世界選手権の選考に落ちて、7月のユース五輪アジア地区予選でも疲労感が出て棄権。自分の持って行きたい試合にピークを持っていけていませんでした。準備ができていなかったわけではありませんでしたが、うまく調整できていなかった」

だからインターハイを頑張ろうと、特別強く意識したわけでもなかったという。ただ、「国内で勝てなければ、世界で勝てるわけがない」と思えるあたりは、「ダイヤモンドアスリート」たる所以だろう。

インターハイ陸上男子100メートルで優勝した塚本ジャスティン惇平

出遅れても焦りなく、爆発力ある走りで追い抜く

この日の予選前に、またしても「右ハムストリングに違和感が出る」というアクシデントに見舞われた。しかし、塚本は「城西のユニフォームを着るのは、これでもう最後かもしれない。そう思ったら、もう怪我をしてもいいぐらいの一か八かの気持ちで、予選、準決勝と、動きを修正しながら自分の中で違和感をなくしていった」と話す。

決勝はスタートでやや出遅れた。だが、塚本に焦りはなかった。「去年もスタートで遅れてしまったけれど、後半に2位まで上げることができた。落ち着いて自分の走りをすれば何とかなる」と、持ち前の爆発力のある走りで中盤以降、ぐんぐん前との差を詰めた。

準決勝で10秒3台をマークしていた桑野拓海(宮崎・宮崎北3年)と辰巳新(富山・富山一3年)の2人に対し、「70メートルぐらいで並んで、抜けたかなという感じ」で、最終盤の三つ巴を制した。

「脚の状態も完璧ではなかったので、トレーナーさんと話し合いながらできる限りのことをして、集中力を切らさずに3本行けたのは良かったです」と塚本。高校日本一のタイトルをようやく手にした感想を聞かれると、「やっと獲れました。まだ200メートルも残っていますが、とりあえずは一安心です」と笑顔を見せた。