創部95年を誇り、全国高校総体(インターハイ)で総合優勝に輝いたこともある松山(埼玉)陸上競技部。短距離・跳躍、長距離、投てきの3チームが切磋琢磨(せっさたくま)しながら、試合本番のような高い集中力で一つ一つの練習に取り組んでいる。 (文・写真 小野哲史)
投げ練習
投げる先には5メートルごとにコーンを立て、一目で記録を把握できるようにしてある。投げる際は「ハンマー、行きまーす!」などと必ず声掛けを行い、安全面を確保してから投げる。
本番から逆算して計画
投てきチームは、基本的に「投げ」の練習とウエートトレーニングを1日ずつ交互に行う。投げの練習は毎回、試合時間に近い「1時間45分」に設定している。重要なのは「一投一投の質」だ。試合では決勝に進むまでに3回しか投げるチャンスはない。いかに本番での一投に集中し、自分の納得できる投てきができるかが勝負を分ける。
ハンマー投げの野口波瑠音(3年)は5月の県大会で自己ベストをマークし、初優勝を遂げた。これまで小さな故障や不調もあったが、試合には調子をきっちり合わせてきた。それは「常に試合日から逆算して『この日は何をしよう』と計画的に練習することを意識しているから」という。「力で投げるというイメージを持たれがちだけれど、大切なのは『力を抜いてリラックスして投げること』なので、念頭に置いています」
かつて同種目で高校王者にもなった川田雅之監督に絶大な信頼を寄せ、「先生に言われたことをコツコツやっているおかげで成長できた」と話す。川田監督直伝の中華鍋を使ってバランスを取って歩く練習法「中華鍋ウオーキング」もその一つ。「反復することで、投げの感覚が理解できるようになった」と振り返る。
股関節を補強し成長
短距離・跳躍チームに所属している110メートル障害の中野ヤマト(3年)は、日本代表の卒業生に股関節を補強する練習法を教わった。壁に両手をつき、抜き足(ハードルを越える際に曲げる足)だけでハードルを素早くまたぐ動きを繰り返すもので、特に冬季に実践してきた。5月の県大会では惜しくも関東大会行きを逃したが、「ハードリングの技術が上がりました」と成長を実感している。
日頃から「試合を想定し、少ない本数の準備で体を動かせるようにしている」という意識が部内に根付いている。
中華鍋ウオーキング
内部をコンクリートで固めた中華鍋に乗り、バランスを取りながら前方、あるいは後ろ向きに歩く。投てき種目の基本となる、腰のひねりと体重移動を身に付けるためのトレーニング。
ハードルの股関節補強
壁に両手をついて上体を前傾させ、抜き足でハードルを素早くまたぐ動きを繰り返す。中野は50回×3セットを週2、3回行ったことで、スムーズな抜き足動作が身に付き、タイムが向上した。
取材日の練習の流れ(投てきチーム)
- 15:30
- ジョギング、体操、ストレッチ
- 15:50
- ドリル(動きづくりの練習のこと。プレート横振り、プレートスイング歩行、メディシンボール投げ、中華鍋ウオーキング)
- 16:20
- 流し(7割程度の速さで気持ちよく走る)を
110メートル×2本、ダッシュを30メートル×5本 - 16:40
- 投げ
- 18:30
- 補強(懸垂、逆上がりなど)
- 19:00
- 練習終了
- 【TEAM DATA】 1924年創部。部員73人(3年生31人、2年生18人、1年生24人)。1987年のインターハイで3種目を制して総合優勝、96年から2016年まで21年連続でインターハイ出場者を輩出した。