大学入試センターは6月1日、2020年度(21年1月)から始める「大学入学共通テスト」(新テスト)の英語の作題の検討の方向性を明らかにした。筆記(読解)問題と聞き取り(リスニング)問題の配点を同じにすることや、長年出題されてきた発音問題やアクセント問題などを取りやめることを検討している。現行のセンター試験の配点や問題構成からは大きく変わり、受験勉強にも影響がありそうだ。(西健太郎)
「4技能のバランス」重視
文部科学省は、英語4技能(「読む」「聞く」「話す」「書く」)を高校生にバランスよく学んでもらうことを重視しており、入試改革もその方針に沿って進めている。20年度からは4技能を測る民間の英語の資格・検定試験を大学受験生に受けてもらい、成績を大学入試センターが取りまとめて大学に提供する仕組みをつくる。また、センター試験の後継として20年度から始める新テストでも、23年度(24年1月)までは問題構成を改めたうえで英語の出題を続け、24年度以降は民間試験に一本化したい考えだ。
現行のセンター試験の英語の配点は筆記試験が200点、聞き取り試験が50点だが、センターでは、「英語教育改革で各技能をバランスよく評価することが求められている」として、新テストの筆記と聞き取りの配点を同じにすることを検討しているという。本番では、各大学が選抜に使う際に配点を変えることは可能とはいえ、センターの配点に則って選抜をする大学が少なくないとみられ、受験勉強への影響も大きそうだ。
また、センター試験では、「話す」「書く」の2技能を直接測れないため、発音やアクセント、語句整序などを選択式で問う設問を長年出題してきたが、新テストではこうした出題を取りやめる方向で検討している。こうした出題に対し、「受験のための英語学習を助長するといった批判がある」(大学入試センター)ことに加え、民間試験で「話す」「書く」技能を直接問えることなどが理由という。
11月の試行調査で配点や問題構成を検討
センターでは2月に新テストの英語の試行調査(プレテスト)を実施したのに続き、11月に他教科とあわせて2度目の試行調査を行う。その際には、英語の読解と聞き取りの配点は均等にし、発音問題などは出題しない。その結果を検証し、またセンターに寄せられる意見もふまえ、最終的な出題方針を決める考えだ。
2月に実施した試行調査は、全国158校の高校2年生ら6308人が受けた。作問にあたっては日常生活や、学校の授業など「実際のコミュニケーションを想定した自然な場面設定を重視した」といい、筆記試験では、飲食店の口コミ投稿サイトを題材にしたり、授業で討論や発表をする準備として参考資料となる英文を読ませたりする問題があった。聞き取り試験でも、日常生活や大学の講義といった場面設定がされた。そのため問題の語数が増える傾向にあり、受けた生徒のアンケートでは「時間が短かった」という声が多かったという。高校教員のアンケートでは、発音問題などを出題しないことについて7割が肯定的だったが、3割は否定的で意見が分かれた。
聞き取り試験「1回読み」出題も
また、センター試験では、全ての問題の音声が2回読み上げられているが、試行調査では、半数の生徒については、一部の問題を1回しか読み上げなかった。生徒のアンケートでは「1回読み」と「2回読み」を推す意見が分かれたという。センターでは11月の試行調査でも、一部の問題を「1回読み」にして、結果を検証する。