生徒の代表として学校をよりよくするために活動する生徒会だが、活動するにあたって苦労することがあるという。どのような悩みが多いのか、全国生徒会大会で役員をしている3人にインタビューした。今回は、生徒会担当の先生が企画を承諾してくれない、新しいことを始めようとすると反対される、などの悩みがある生徒会と先生の距離について聞いた。


井澤大樹君 東京・城北高校2年・生徒会長(左)
栗林寿樹君 奈良・西大和学園高校2年・生徒会長 (中央)
中谷実希さん 奈良・奈良学園高校2年・生徒会長(右)
※役職、学年は2018年2月時点。3人とも、高校の生徒会役員が話し合い交流する全国高校生徒会大会の運営メンバー。

先生に「面白いことやってるな」と思わせる工夫をする

――生徒会と先生との関係というのは?

井澤 生徒会の活動に協力してくれる先生もいるのですが、新しいことをしようとすると「それは違うのではないか」と先生に否定されることがあります。そうすると、一度企画が止まってしまうので、自分たちがやりたいことを先生に理解してもらうことが大事ですね。そのために僕は足しげく職員室に通ったりして、先生の理解を深めていました。

栗林 先生に「生徒会がなかなか面白いことをやっているな」と思わせるように工夫しています。僕は昨年1年間、生徒の中できっと一番多く職員室に入っていたと思いますね。1日5回くらい職員室に行っていました。休み時間のたびにいろいろな先生に話しに行っていましたね。

――生徒会担当の先生以外にも話しかけるんですね。

栗林 先生の中でも式典担当や渉外担当の人など様々な役割があるので、様々な役割の先生に話していました。そのおかげで昨年は生徒主導の入試説明会が実現しました。参加した受験生からは生の声が聞けてよかった、と好評でした。

――生徒会の生徒から入試説明会をやりたい、と言ったの?

栗林 いえ、そのような話は出ていませんでした。渉外担当の先生が、「生徒がもっとでていくべきだ」と言ってくれたおかげです。

協力してくれる先生と話を進める

――先生の力関係を知っておくことは?

栗林 それも必要です。生徒会の先生に直接話して拒否されることがあっても、偉い先生に話が通りそうだった場合、直接偉い先生に話してしまった方がいいと思うんです。偉い先生に話を通してあれば、生徒会の先生にも話が通りやすいです。

中谷 生徒会の先生はだめといっても、他の先生はいいと言ってくれることはあります。そのときには、賛成してくれる先生と話を進めます。

「体育着を変えたい」

――具体的にどのような活動をしてきたの?

井澤 僕は、生徒会長になるときの公約に「体育着のデザインを変える」というのを書いていました。任期は2月からだったのですが、(就任前の)夏にそれを思い立ってから、継続的に先生に相談していました。「3年かかる」と聞いていたのですが、「それでは僕は着られない、新しいデザインの体育着を着たい」という思いから校長先生にまで話を通そうと考えました。

――校長先生に直接話しにいったの?

井澤 はい。もともと年に1度、就任したときにしか話す機会はないのですが、校長先生に直談判しました。校長先生の理解を得てから、体育科に行って説明をしたところ承諾をもらいました。生徒会の先生だけではなく先生の「適材適所」を考えて行動することが大切だと思いますね。結局生徒会の先生にも協力してもらえたのでよかったです。体育着は、2月に就任したときには「根回し」が済んでいました。デザインを半年かけて考えて、新年度から着られるようにしました。会長の行動の原動力は、自分がやりたいと思うことだと思います。

生徒会長になって成長「新しい可能性が開けた」

――生徒会長に入って変わったこと、成長したことを教えて。

中谷 もともと教室で教科書を読むだけでも緊張するような人間でした。生徒会長になって、体育館でみんなの前で話す機会が増えました。加えて、原稿がなくても話せるようになったのは大きいと思います。(生徒会の)連盟で議長をやらせてもらった経験から、初めて会う人とどうやったら打ち解けられるか、自分の意見を発信していくか、というのを学ぶことができ、成長できたと思います。上手く話せるようになるために、イントネーションなどの練習を繰り返ししました。

井澤 出会いが一番大きいです。人だけではなく、自分自身が秘めているものとの出会いもありました。自分の演説能力など、人前で話すことで初めてわかってくることもあります。同じ学内でも普段出会えない人と出会えて、「こんなこともできるんだ」と影響を受けることや、全国の役員と出会う機会があり、自分がやっていないことをやっている人がいて、「こんなことをやっている人がいるんだ」という驚きがたくさんありました。

栗林 僕も初めて生徒会に立候補した中学2年生のときには、演説で足が震えて、ノリで話して笑われていました。しかし、最後の演説ではみんなの顔がきれいに見えて、原稿もなく、しっかりと話せました。よく「じゃがいもだと思え」というのを聞きますが、僕はじゃがいもだと思ってほしくないんです。みんなの顔をきちんと見て話すべきだと思います。聴衆のことを思って、考えて話すことが大事だと思います。

中高一貫の出身ですが、中学1年生の自分がまさか生徒会長になっているとは思ってもいませんでした。そう考えると、3年後の自分ってまったく想像つかないんですよ。なので、生徒会長を通して、新たな可能性が開けたと感じます。