【2017年7月10日:最新情報を反映させました】大学入試改革の議論が進んでいる。国は、大学入試センター試験に替わる、新たな共通テスト「大学入学共通テスト」(新テスト)を2020年度(21年1月)から始める方針だ。新テストでは、記述式が導入されるほか、英語は民間の「4技能試験」に移行させる。各大学に個別試験の改革を求めてもいる。背景には、これからの時代に求められる力を学生に付けてもらう考えがあるようだ。直接影響があるのは21年4月に大学に入学する人からだが、現役高校生にも知っておいてほしい改革の内容をQ&A形式でまとめた。
2020年度から新テスト
Q センター試験が無くなるの?
A 国は、現在の大学入試センター試験を廃止し、2020年度から、「大学入学共通テスト」を始める考えだ。
Q 何が変わるの?
A 大学志願者の学力を測る目的は変わらないが、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価するために、出題内容を変えようとしている。用語や解き方を覚えているかではなく、高校で学んだ知識や技術を使って考える力を確かめる試験にする。
Q どんな問題になるの?
A センター試験はマークシート方式で解答するが、新テストでは、国語と数学に記述式問題を出題する。それぞれ小問3問程度の出題となる。国語は、80~120文字程度の記述を含むという。英語と理科など、いくつかの教科や科目を組み合わせた試験も検討されたが見送られた。新たな学習指導要領で学んだ高校生が受ける24年度(25年1月)のテストからは科目も含め、見直される。このタイミングで理科や地歴・公民に記述式が導入される可能性がある。実施方針が決まるのは21年度の予定だ。
Q 英語はどうなるの?
A 文科省は、共通テストでの英語の試験を取りやめ、英検やTOEFLなど民間の資格・検定の中から国が認定した試験を受験生に受けてもらう考えだ。センター試験で測ってきた「読む」「聴く」に加え、「話す」「書く」を含む「4技能」を評価するためだという。文科省には、「共通テストの中で4技能を出題するべきだ」といった意見も多く寄せられたが、約50万人が受験する試験での実施は不可能と判断したようだ。ただ、大きな変更となることに配慮し、20~23年度の4年間は共通テストでの英語も出題し、民間試験と共通テストのどちらの英語の成績を活用するか、各大学が判断することになる。
年に何回も受けられる?
Q 年に何度か受けられるの?
A 新テストの検討の過程では、年に複数回実施することで「一発勝負」とならないようにする案があった。ただ、別のテストの結果を入試の判定に利用するときに公平性を確保するのが難しいこと、共通テストの実施を早めることに高校側の懸念が大きかったことなどから見送られ、センター試験と同じく、受験は1回限りで、1月中旬に実施されることになった。ただ、英語の民間試験は、高校3年生の4~12月に受けた結果を2回分まで入試に使えることとなった。英語だけは「複数回試験」が部分的に実現したともいえる。
Q 科目や配点は今まで通り?
A 2020年度の開始から4年間は、センター試験と同じ科目の枠組みで実施される。ただ、その後、新しい学習指導要領で学んだ高校生が受けることになる24年度実施のテストからは科目も大幅に変わりそうだ。配点が変わるかはまだはっきりしないが、国語の記述式は点数ではなく3~5段階の評価となる方向だ。検討の過程では、「1点刻み」の選抜を避けるとして、試験結果全体を素点ではなく、段階別評価にして各大学の選抜に利用してもらう案もあったが、見送られた。
Q 入試改革は今の高校生には関係ない?
A 2019年度(20年1月)まではセンター試験が存続し、その間は出題に大きな変更はないだろう。改革は、暗記中心の勉強だけをしてきた人は、これからの時代には通用しないという危機感が背景にあることは知っておきたい。「思考力・判断力・表現力」は、今の高校生にとっても重要だ。勉強は、知識をもとに、考える力や課題に取り組む力をつけるもの、という意識を持つとよいね。
各大学の入試改革も進む
Q 各大学の試験も変わるの?
A 国は、大学入試で、知識だけでなく、思考力や判断力、表現力、自分から課題を見つけて解決する力や、さまざまな人と協力して学ぶ力を総合的に評価してほしいという。そのために、一般入試や推薦・AO入試の改革を各大学に求めている。具体的には、(1)調査書や志願者本人が作成した高校時代に取り組んだことについての資料を活用する(2)記述式問題の充実(3)英語4技能の総合評価などの改善を図ってほしいという。推薦入試やAO入試では「学力不問」にならないよう、大学入学共通テストを課すか、小論文・口頭発表・各教科のテストなどを活用するよう求めている。各大学は、20年度に実施する入学試験の概要を18年度には公表しないといけない。大学入学共通テストの方針がなかなか決まらなかったこともあり、大学側からは「スケジュールがぎりぎり」といった声も聞かれる。