空手が4年後の東京五輪の正式種目に決まった。立教新座(埼玉)空手道部主将の山中望未(2年)は今年、男子個人形で全国高校選抜大会、全国高校総体(インターハイ)の「2冠」に輝き、県から五輪の強化選手に指定された。素早い動きから繰り出される一つ一つの技を磨き上げた成果だ。
(文・写真 茂野聡士)
相手を倒すイメージで演武
立教新座の空手道部は総勢5人。校内で行われた練習では、山中の突きと蹴りは明らかに他の部員と威力が違った。
空手は、相手と対戦する「組手」と1人で演武する「形」の2種類があり、山中は形に長年取り組んでいる。「敵との対戦を想定して、目の前にいる相手を実際に倒すイメージで形を繰り出すことが重要」と語る。実戦でも相手を倒せる威力の技を見せることで、審査員の評点も高くなるという。
幼少のころはぜんそく持ちで、体を強くするために空手を始めた。「さまざまな流派があり、一つ一つの技の動きが決まっています。その形を突き詰めていく部分に面白さを感じました」
小柄な体格をスピードでカバー
166センチ65キロ。空手の選手としては小柄な体格をカバーする素早さが最大の持ち味だ。「得意な形は『松濤館流(しょうとうかんりゅう)形』というもので、力で押すのではなく、スピーディーな動きで一撃必殺を狙う技が多いのが特徴です」
精神面の強さ、原動力に
一つの形だけを追求すればいいものではない。大会では初戦から決勝まで6、7試合ほど戦うが、試合ごとにそれぞれ「指定形」と「自由形」の中から一つを選んで演武し、自分の得意な形でも一度だけしか使用できないルールとなっている。「決勝までに得意な形を取っておくため、他の形も上達するように日々の練習で常に意識しています」という。
顧問の新宮崇敬先生は「集中力があって、気持ちの切り替えも素晴らしい」と評する。精神面の強さも2冠の原動力となった。
4年後には東京五輪を控えるが「出てみたい気持ちはありますが、現時点ではシニアの国際大会を戦って自分の力を知りたい」と、現実的に目標を見据えている。
- 【やまなか・のぞみ】
- 1999年6月12日、埼玉県生まれ。岸川中卒。本格的に競技を始めたのは小学1年から。中学時代に世界ジュニア&カデットアンダー21空手道選手権、2016年に東アジアジュニア&カデット空手道選手権でそれぞれ優勝。166センチ65キロ。