富士宮東高校美術部の佐藤美月さん(3年)と塩澤海斗君(3年)。

 

キャンバスに見立てた黒板に自由な発想で描いた絵画の出来ばえを競う「第2回黒板アート甲子園」(日学株式会社主催)が開催された。5月9日に審査結果が発表され、88校・153作品の中から静岡・富士宮東高校美術部の生徒による黒板アート「VR黒板」が最優秀賞(1位)に輝いた。(中田宗孝)

美術部コンビがリベンジ

動物たちが黒板の中から飛び出してくる未来の授業風景を描いた「VR黒板」で最優秀賞を受賞したのは、塩澤海斗君(3年)と佐藤美月さん(3年)。美術部に所属する2人は、春休みに約1週間かけて美術室の黒板に作品を描きあげた。1日6時間かけて「黒板アート」に没頭した日もあったという。

2人は1年生の時も「黒板アート甲子園」に作品を応募して「日学特別賞」に選ばれた実力派コンビだ。今回はさらに上位の賞を目指すために、前回よりも作品のテーマを明確にし、迫力のある構図を意識したという。「テレビやネットで話題のバーチャルリアリティ(VR)技術が、もしも未来の授業で使われていたら……。そこからイメージを膨らませてVR黒板を思いつきました」(塩澤君)

立体的になるよう重ね塗り

制作は塩澤君が主導し、佐藤さんは背景の下塗りなどのサポート役に徹した。描かれたキリン、トラ、猫といった動物は、飛び出すような特徴的な動作をしている何枚もの写真を参考に選ばれた。「キリンが首をつきだす仕草は立体的に見えるように何度も首の角度を修正しました」(塩澤君)

7~8の限られたチョークの色数で、動物たちの毛並みを描かなければならない。そこで塩澤君は、黄色、赤、茶色、白を塗り重ねる工夫で、遠目からオレンジっぽく見える配色を作りあげたという。より細かい部分は、パケや筆を駆使して丁寧にキリンの顔やトラの身体の色彩を表現した。「作品に登場する生徒は私たちの友人です。絵と同じように黒板の前に座って驚くポーズをしてもらいました。塩澤君が描いた友人の横顔や髪型はそっくり(笑)」(佐藤さん)

文化祭後に消す予定

2人が手掛けた渾身の大作も、6月3・4日に開催する学校の文化祭での展示後に消す予定だ。「黒板アートに取り組むのは今回が最後。思い入れのある作品なのでさびしい気持ちになりますが、2人で消したいと思います」(塩澤君)