全国高校総体(インターハイ)陸上の女子400メートルリレー決勝が7月31日にNDソフトスタジアム山形(山形県天童市)で行われ、前回は2位で涙を飲んだ中京大中京(愛知)が45秒48をマークし、悲願の初優勝を手にした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
決勝は「攻めのバトン」で
中京大中京の原動力になっていたのは、1年前の悔しさだった。前回の決勝を走った久野なつと長谷川愛樹(ともに3年)だけでなく、11人いるリレーメンバーが思いを共有し、この日のために個々の、そしてチームの力を高めてきた。それは1年生の髙須鮎香であっても変わらない。
「1年前、私はまだ中学生で、中京大中京を2位でもすごいなと見ていました。でも、(6月の)東海大会でバトンがうまく行かずに2位になり、とても悔しかった。全国では絶対に日本一になりたいと思いました」
準決勝は出場チーム中最速の45秒91。2走の久野なつ(3年)は「みんなが調子が良いというのがわかったので、決勝ではなるべく移動距離をかせぐような攻めのバトンをしました」と話す。ただ、予選、準決勝と決勝は風向きが真逆になり、そこをきちんと修正するなど、選手たちは冷静さを保ってこの日を迎えていた。
「感謝しながら走った」
「緊張したけれど、先輩たちを信じて走れば絶対に大丈夫」と、得意のスタートを決めた髙須から久野に渡り、3走は東海大会100メートル覇者の天神綾音(2年)。「地区予選からメンバーはだいぶ変わっていますが、これまでつないでくれた人やサポートしてくれた人たちに感謝しながら走りました」とうれしそうに語った。
2年連続でアンカーを務めた長谷川は天神からトップでバトンを受けると、ゴールを目がけて突っ走った。前回の決勝でもトップでバトンをもらったが、倉敷中央(岡山)に逆転を許した苦い経験がある。しかし、今年の長谷川は違った。100メートルで8位に入賞するなど個人としてもレベルアップを遂げ、精神的にもたくましくなっていた。
「一番にゴールすることだけしか考えていませんでした。周りのことは意識せず、前だけを見て自分の世界で走りました」
優勝タイム45秒48は、昨年の決勝の45秒78を0.3秒上回ったことになる。天神が「中京大中京は日本一の監督、練習、サポート、応援」と言うように、1年かけて縮めた0.3秒が「日本一」という最高の勲章につながった。