全国高校総体(インターハイ)陸上の男子4×100メートルリレー決勝が7月31日にNDソフトスタジアム山形(山形県天童市)で行われ、岐阜聖徳(岐阜)が40秒29で初優勝。前回覇者の洛南(京都)を0秒03でかわし、岐阜県勢としてもこの種目で初の栄冠を勝ち取った。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
洛南・宮本の追い上げにも焦らず「自分の走りを」
佐々木耀(3年)からバトンを受けたアンカーの豊島優(3年)は、後方から猛烈な勢いで追い上げてくる100メートル王者・宮本大輔(洛南3年)の存在に気づいていたという。
「佐々木が1位で来てくれるのはわかっていたし、追い上げられる展開になることもわかっていました。でも、とにかく自分の走りをしっかりしようと意識して、慌てるようなことはありませんでした」
あと数メートルあったら結果はどうなっていたかわからない。ただ、佐々木が「豊島なら大丈夫。渡した瞬間、(優勝は)行けると思った」と振り返った通り、チームメートの信頼を自身の推進力に変え、豊島は際どい勝負をものにした。
バトンの加速「一番の出来」
前回は準決勝で敗退したが、第1走の伊藤大知(2年)、佐々木、豊島はそのときのメンバー。残りの1枠に110メートル障害が専門の主将・松田太一が加わったが、松田は東海大会でインターハイ出場を逃していたため、この1ヶ月はリレーに専念してきたという。
「うちは他のチームと比べて、1人1人に走力があるわけではありません。バトンのゾーンでいかに加速して次の走者につなげるかというのを1つのテーマとしてやってきました。少しバタついたところもあったけれど、加速に関しては今までで一番良い出来だったと思います」(松田)
コーナーを得意とする伊藤が「100点の出来だった」と好スタートを切った後、松田も向かい風にうまく対応し、「中継の役割は果たせました」と胸を張った。佐々木は準決勝敗退に終わった個人の100メートルを含めても、「今年の中で一番いい走りができた」と自賛する。優勝を「素直にうれしい」と語った豊島は、「ラスト20メートルが勝負になると思っていたので、後半にスピードを上げる練習をしてきたこと」を勝因の1つに挙げる。
大エースはいなくとも、総合力で戦うことにより活路を見出す。まるで世界大会に挑む日本代表チームのような戦いぶりで、岐阜聖徳は悲願の日本一の座についた。