全国高校総体(インターハイ)陸上の女子100メートル決勝が7月30日にNDソフトスタジアム山形(山形県天童市)で行われ、兒玉芽生(大分・大分雄城台3年)が12秒02(向かい風3.0メートル)で制し、悲願の優勝を手にした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
走れなかった時期も夏を見据えトレーニング
2年生だった昨年の北九州大会で、100メートルを走り終えたとき、左足親指を骨折。インターハイの出場権を手にしたにもかかわらず、兒玉は本戦のスタートラインに立つことができなかった。秋の国体も予選で肉離れ。相次ぐけがにより春先以外はまともに走れなかったが、高校入学時に掲げた「3年間のうちに日本一になる」という目標が、兒玉をマイナスの感情に向かわせなかった。
「(走れない時期は)このインターハイに向けて、ずっとウエートトレーニングばかりやっていました。それによって体に軸ができ、力強く前に前に進めるようになった気がします」
それほど上背はないが、がっしりした体格でパワフルな走りが兒玉の持ち味。「向かい風が得意」と言うように、準決勝と決勝では向かい風をものともしなかった。
「自分の走りを」焦らずゴール前で逆転
満を持して臨んだインターハイだったが、決勝までは思うようなパフォーマンスはできなかったと兒玉は振り返る。
「予選はスタートで出遅れ、準決勝は一歩一歩前に進む感じにならず、隣のレーンの人(臼井文音=北海道・立命館慶祥2年)にレースを支配された感じになってしまった」
ただ、兒玉にとって良かったのは、決勝も隣のレーンに臼井が入ったことだった。「決勝も準決勝のように競り合いになるはず。そこで足を流さずにしっかり前で捉えて、自分の走りをしよう」。その作戦がズバリ的中したのだ。
号砲とともに勢いよく飛び出した臼井を、「焦りはなかった」という兒玉が追いかける展開。中盤から徐々にその差を詰め、ゴール直前でトップに躍り出て僅差で勝利をもぎ取った。「やっと勝てたなというのが率直な思いです」
陸上競技の魅力を「苦しくても、練習でやったことは全部、自分に返ってくるところ」と語る兒玉。この1年で自らがそのことを実践してみせた。