初優勝を飾った福島・安積黎明高校かるた部の団体メンバー

第39回全国高校小倉百人一首かるた選手権大会(全日本かるた協会など主催)の団体戦が7月22日に近江神宮・近江勧学館(滋賀)で行われ、安積黎明高校(福島)が初優勝に輝いた。“笑顔”を戦略の一つにすえ、見事に頂点へと駆け上がった。(文・写真 白井邦彦)

漫画「ちはやふる」人気もあって競技人口が増えていると言われる競技かるた。「かるたの甲子園」とも呼ばれる今大会も団体戦には過去最多57校が出場。都道府県予選には昨年の301校を大きく上回る326校が参加した。

王者・暁星が予選敗退 波乱の開幕

昨年、涙の9連覇を果たした暁星高校(東京)が東京都予選で敗退する波乱があった今大会。出場校で過去に優勝経験があるのは、優勝12回を誇る富士高校(静岡)と、それぞれ優勝1回の益田高校(島根)・浜松北高校(静岡)・中津南高校(大分)を合わせた4校のみ。それ以外は、勝てば初優勝という状況で幕を開けた。
 そして決勝へ駒を進めたのは安積黎明(福島)と白鷗高校(東京)。ともに勝てば初優勝という緊迫した決勝戦を制したのは、創部11年目の安積黎明だった。

部長が最初に1勝 流れを作る

団体戦は、各校の登録選手8人のうち5人が出場し、1対1で対戦して勝った人数で争う。初優勝した安積黎明高校は、部長の阿部麻莉奈さん(3年)が最初に1勝を挙げていい流れを作った。最終的に3勝2敗。部長の阿部さんは「決勝戦は自信を持って、笑顔を絶やさず、日頃の成果が出せたと思います。3回戦の星野高校(埼玉)は苦戦を強いられたけれど、そこをみんなで乗り越えられたことで勢いに乗れた」と大会を振り返った。

部長の阿部麻莉奈さん(3年・写真中央)の元に集まって喜び合う安積黎明かるた部の選手たち

大会2週間前に骨折「劣勢でも笑顔でくじけず」

安積黎明高校の合言葉は「楽しく・礼儀正しく・かっこよく」。決勝でも常に笑顔で声かけを続けた主将の西牧真凛さん(3年)は「普段から笑顔は意識しています。どんなに部長(阿部さん)の練習メニューが厳しくても絶やさないように(笑)」と話す。大会約2週間前に利き手の指を骨折したが、それでも西牧さんは「テーピングぐるぐるでしたけど、笑顔で乗り切りました!」と笑う。
 実はこの笑顔には自分たちのテンションを下げないだけではなく、相手との駆け引きにも効果があると西牧さんは話す。「劣勢でも笑顔で1枚1枚をくじけずに取っていく姿は、相手にとっては気持ち悪い(笑)。“この状況でなぜ笑っていられるの?”と相手に思わせたら、精神的に有利に運ぶことがあります」

常に笑顔で競技を続けた安積黎明の主将・西牧真凛さん(3年)

団体メンバーで唯一の男子、菊池信吾くん(3年)は「みんなで笑顔の練習もしました。僕の場合は“ニヤケ”笑顔。効果があったかどうかはわかりませんが…3年間頑張ってきて日本一になれてうれしいです」と振り返った。
 澤田静香顧問は「私は見守っていただけ。最後まで安積黎明らしく、楽しく競技ができたことが優勝につながったのだと思います」と、笑顔で大会を振り返った。

団体メンバーと一緒に喜ぶ安積黎明の主将・西牧真凛さん(3年)
【部活データ】
2006年創部。部員30人(3年生12人、2年生13人、1年生5人)。練習は週6回、平日は約2時間半、休日は約8時間。全国高校かるた選手権出場は10回。第32回大会で四位に。昨年の第38回大会は予選トーナメントで大会9連覇を果たした暁星高校(東京)に敗れた。

【大会結果】
優勝 安積黎明(福島)
準優勝 白鷗(東京)
3位 膳所(滋賀)
4位 高崎女子(群馬)
ベスト8 高岡(富山)、浦和明の星女子(埼玉)、宇都宮(栃木)、駒場(東京)