国立大学が推薦・AO入試による入学者を増やしている。東京大、京都大、大阪大が相次いで導入したほか、推薦・AO入試の定員拡大を目標に掲げる大学もある。国立大学協会は定員の30%まで増やす目標を立てた。確かな学力と多様な資質を持った学生を入学させたい考えがある。(西健太郎)
東大・京大・阪大が導入 一般入試より女子比率高く
東京大が16年度入試から初めて推薦入試を導入した。京都大も同年から推薦入試とAO入試から成る「特色入試」を始めた。東大は推薦入試で「高校在学中に特定の領域に没頭した卓越した実績を上げている人」(南風原朝和・前理事)に入学してもらうことで大学の活性化を狙う。京大は学部・学科ごとに実施しており、「応募要件や試験問題を通して研究内容や学習内容を理解してもらえるよう工夫している」(北野正雄理事)という。大阪大も17年度から推薦・AO入試を学部ごとに実施する「世界適塾入試」を始めた。
東大で推薦入試合格者に占める女子や関東以外の出身者の比率が一般入試より高くなるなど、これらの入試は入学者の多様化につながっていることがうかがえる。とはいえ、まだ十分に受験者を集めているとはいえず、予定した募集人数を合格させていない学部も目立つ。京都大は17年度入試では、一部の学科で前年度から要件を緩和した。
東京医科歯科大は今秋実施する2018年度入試から面接や小論文などで合否を決める「特別選抜」を始める。「高校時代に頑張った活動のある人、リーダーシップのある人を全国から集めたい」と幹部は話す。 一橋大も18年度入試から、全学部で推薦入試を実施する。
国立大学協会は「定員の30%」目指す
文部科学省によると、2016年度入試で国立大全82大学中79大学(96%)が推薦入試を、51大学(62%)がAO入試を実施した。ただ、入学定員に占める比率をみると、推薦入試が12%、AO入試が3%と、増えているとはいえ私立大に比べると比率は低い。東大推薦入試の募集人数も全体の3%程度で、拡大には慎重な姿勢だ。
だが、すべての国立大が加盟する国立大学協会は推薦・AO入試による入学者を21年度までに定員の30%に拡大する目標を立てた。「確かな学力と多様な資質を持った入学者を受け入れる」(里見進・前会長=東北大総長)のが狙いだ。強制力はないが、名古屋大が推薦やAOなどの定員比率を現在の17%から35%まで引き上げる方針を打ち出し、東北大も現状の20%程度から30%まで増やす計画を立てるなど、各大学で入試改革の検討が進む。
高校での研究経験求める入試も
国立大の推薦・AO入試の難易度は、教科の学力試験が中心の一般入試とは質が異なる。また、学部ごとに出願要件や選抜方法が異なることが多く、募集要項を読んで、自分が当てはまるか検討するとよい。例えば、東大推薦入試では、一部の学部が出願要件の例として「国際科学オリンピック」などの実績を挙げたことが注目されたが、「総合的な学習の時間や自主的な研究活動、社会貢献活動で学んだこと」(文学部)といった研究活動に関する資料や論文を提出させたり、要件の例に社会貢献活動・国際的活動・部活動などでの「主導的な役割を果たしたことにより顕著な成果を挙げた活動」(工学部)を経験したことを挙げたりしており、実際、こうした成果を提出して合格した人もいる。
お茶の水女子大学が始めたAO入試「新フンボルト入試」は、文系受験者は図書館で文献などを調べてミニレポートを作成したうえで討論し、理系受験者は実験やデータ分析をする。高校の総合学習や課題研究でこうした経験があるかどうかで取り組みやすさは変わるだろう。
試験日程は、一般入試と異なり、各大学で異なる。面接や討論、論文といった試験は11~12月頃に実施する大学が多いが、学力の確認のため、1月の大学入試センター試験の受験を課す大学も少なくない。その場合、合格発表が2月になる。
アドミッション・ポリシー 受験準備の参考に
推薦・AO入試を受験する高校生が目を通しておいてほしいのは各大学が求める学生像を示した「入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)」だ。学部ごとに策定されていることが多く、入試要項やウェブサイトなどで読める。志望理由書を書いたり、面接試験に臨んだりする際に参考になるだろう。一般入試受験者も、勉強のヒントが得られる場合があるので、チェックしておきたい。