2016年4月に新設された千葉大学国際教養学部は、同大学にとって41年ぶりの新学部。国際教養という学部自体、国立大学で初ということもあり、注目を集めている。学部のコンセプトや特徴、設置から2年目を迎えた現在の様子を、学部長を務める小澤弘明教授に話を聞いた。
テーラーメイド教育の実践のため、学生90人に対し教員は46人
「国際教養学部は、特定の学問を学ぶ学部ではありません。最初にグローバルイシュー(世界が抱える課題)を見つけ、その解決に向けてどうすべきか、どんな学問が必要かを考え、知識を選択・統合し、解決能力を育てていく学部です」と話すのは、国際教養学部長の小澤弘明教授だ。
2016年4月に設置され、1学年90人の学生に、46人の教員が教鞭を執る同学部。言語学や史学、医学から建築学までさまざまな専門家が教員として名を連ね、学生一人ひとりの課題にあった学びを提供する。この「テーラーメイド教育」を実践するために46人もの教員が揃う。その範囲に文理の壁がないのが、同学部最大の特徴だ。
「英語の名称は“College ofLiberal Arts and Sciences”。“サイエンス(科学)”と入っているのは、文理を融合するのではなく、“混合”して学ぶからです」。そのため、1年次には人文社会科学、自然科学、生命科学の基礎をバランスよく学び、各々が設定した課題に向けて最適なアプローチを考える力を身につける。では、いったいなぜ文理混合が必要なのだろうか?
「一つの学問分野では解決が困難な課題があるからです。たとえば、地震研究は従来地球科学という分野で自然科学からのアプローチでしたが、自然災害に対して人間がどう向き合い、どう復興してきたかを考えるには社会学的アプローチも必要です」と小澤教授。東日本大震災の津波は、9世紀の貞観地震とほぼ同じ。つまり、古文書や津波堆積物を探って歴史地震学を学ぶと、より複合的な視点で自然災害に向き合う研究が行える。同じことはグローバルな課題にも言える。
「移民・難民問題も、社会学的に研究するだけでなく、現地での看護や医療、難民キャンプでの予防医学の観点なども必要です。課題そのものが文理混合を要請している時代なのです」
卒業までに全員が留学。ただし自分でセッティング
個々の学生に課題設定が必要となるが、それを可能とするのが数々の「ソーシャルラーニング」だ。「現場で学ぶ、現場を学ぶ」を学習理念とし、フィールドワーク、インターンシップ、ボランティアなどグローバルな世界と地域の双方を舞台にした活動を行っていく。
NPO法人と連携したボランティア活動や、地元企業の海外での物産展における企画・運営に携わるインターシップのほか、授業で人口減少地域の産業振興を学ぶなど、地域と連携した学びが豊富だ。
また、学生は卒業までに1回は留学することが必須。留学の時期や回数は、自身の課題解決の方針に合わせて自ら決定する。
千葉大学では1年間を6期に分ける6ターム制を導入しているが、これを上手に利用し、
地域連携の学びや留学のスケジュールを授業に縛られずに組むことも可能だ。「2年次の
6~7月には必修科目を置いていません。つまり、夏休みを含め6~9月までそれぞれが希望する学びを実践できます」
決まった学問分野から出発するのではなく、自分で見つけた課題を、どう学ぶか自分で考えることによって自立した学びをしてほしいと小澤教授は望んでいる。「国や国連がこう言ったから、など権威に寄り添って物事を考えるのではなく、原理的に考えて善し悪しを発想できる力を身につけてほしいのです」
最後に高校生には勉強への考え方をアドバイスしてくれた。「文系理系と分けて考える
のは、もうやめましょう。文系だから理科がいらないわけでも、理系だから漢文がいらないわけでもないのです。課題から考えないと問題解決はできない。国際教養学部で学びたい人は、いろいろな分野を学習してきてください」
テーラーメイド教育を支える SULA※からのメッセージ
※Super University Learning Administrator
SULAとは、わかりやすい言葉にすると学修支援を行うアカデミック・アドバイザーです。週3回のオフィスアワーを設けているほか、予約があれば個室での相談も受け付けています。まだ、1・2年生しかいないので、本格的な学修相談はあまりありませんが、小さなつまずきがないように、生活や留学に関する相談にものっています。入学時に専攻が決まっていない学部なので、今後は卒業研究につながるような留学や勉強の相談に応えていきたいと思います。
先輩に聞く
国際教養学部2年 忽那遥香さん(東京都立八王子東高等学校出身)
他の学部と違うのは、アクティブラーニングやグループワーク、プレゼンテーションが多いこと。発信するスキルが身につきます。まだ、興味ある分野を見つけられていないので、いろいろ学ぶ中で自分の専門を見つけたいと思います。