昨秋の明治神宮大会で優勝し、今春のセンバツでは準優勝に輝いた履正社(大阪)硬式野球部。プロ注目の安田尚憲(3年)を軸にした全国屈指の強打線は、選手の自主性を大事にする指導から生み出された。選手自ら考え、壁を乗り越えてきた自負を胸に日本一を目指す。(文・写真 白井邦彦)
長打力光る安田が軸
高校野球を騒がす東の横綱が早稲田実(東京)の清宮幸太郎(3年)なら、西の横綱は履正社の安田だ。188センチ92キロの巨体を生かした長打力は、清宮に引けを取らない。明治神宮大会の決勝では直接対決が実現し、話題になった。安田はこの対決をこう振り返る。「初めて見た清宮選手はオーラがあった。体感として彼のレベルの高さを感じられたのは、今後の野球人生で貴重な経験になった」
だが、安田の転機はここではない。早稲田実戦の1カ月前の秋季大阪府大会準決勝だと話す。「練習試合も含めて一度も勝ったことのなかった大阪桐蔭に勝った。この1勝はチームにとっても個人的にも自信になりました」
再びの対戦となった今年4月のセンバツ決勝では、大阪桐蔭に3-8で大敗。「あの悔しさは忘れない。日本一になりたい気持ちは以前よりも強くなった」と言う。
選手だけでミーティング
飛び抜けた強打線を育む指導の軸は「自主性」だ。トレーニング方法や食事の取り方などは監督やコーチが選手に伝える。ただし、「行うかどうかは選手に任せている」と岡田龍生監督は話す。「うちには寮がないので、選手が家でどう過ごすかは管理できない。だから選手に判断を任せている」
その延長線上にあるのが、選手だけで行う伝統の「選手ミーティング」だ。エースの竹田祐(3年)は「自分たちで考えてやるのが履正社の方針。選手ミーティングは、何をすべきかを明確にするためにある」と話す。
センバツの決勝で敗れた後も選手ミーティングを開いた。主将の若林将平(3年)は「なぜ大阪桐蔭に負けたのかを話し合いました。最終的には、相手よりも日本一になりたいという気迫で劣っていたのではないかと思います。日頃の声出しや、一球一球を大切にして練習に取り組む姿勢など、あらためて基本を見つめ直しました」
「やる」「やらない」という選択肢がある中、常に「やる」を選んできた今年のメンバーたち。その先に目指すのはもちろん甲子園の頂だ。
- 【TEAM DATA】
- 1922年創部。部員59人(3年生17人、2年生16人、1年生26人)。春夏合わせて甲子園出場は10回。センバツでは準優勝2回。OBにはT-岡田(岡田貴弘。オリックス・バファローズ)や山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)らがいる。