2016年12月4日、國學院大學渋谷キャンパス若木タワーにて、第20回を迎えた全国高校生「創作コンテスト」(國學院大學・高校生新聞社主催)の表彰式が行われた。今年の応募総数は12,966点。当日はこのうち佳作以上の受賞者26人と、学校賞3校が表彰された。
表彰式では赤井益久学長が「これからも考えること、思うこと、感じることを大事にしてください」と受賞者にエールを送った。
短篇小説の部
最優秀賞を受賞した平田梨花さん(神奈川・慶應義塾湘南藤沢高等部2年)は、受賞作「しろいからすのうみのおや」で、誰にも評価されない小説を書き続ける“やばいやつ”と出会った主人公の変容を描いた。「書くことで、自分の思いに気づかされました」
優秀賞の三堂真由子さん(愛媛県立南宇和高校3年)は、恋と死をテーマにした濃密な作品「彼岸花」。「物語や登場人物の心理を自覚的にコントロールできている巧みな小説」と評価された。
日本神話をモチーフに“協調性という嘘”について書いたのが優秀賞の奥翔太郎さん(神奈川県立横浜桜陽高校3年)。「登場人物を俯瞰する立場で書きました。最優秀賞を取れなかったのが悔しい」
現代詩の部
「馬を飼う」で最優秀賞を受賞した関谷朋子さん(沖縄県立泊高校1年)は、現代詩とは何かを自らに問い続けながら詩を書いてきた。「自由なんだけど自由じゃない感じがいつもしている。人が本当に行きたい場所、行けるんだけど行けない場所について考えて今回の詩になりました」
「がたたん かしゃん ごととん」といったオノマトペを多用し、「音感が非常にいい」と評価された山﨑早恵さん(神奈川県立麻生高校2年)は「ジオラマとパノラマとサヨナラ」で優秀賞を受賞。「音からどれだけ感じ取ってもらえるか、ある意味挑戦でした」
同じく優秀賞を受賞した三上晴香さん(神奈川県立麻生高校2年)の作品は「最初の一行ゼロ円です」。「詩を書こうとして何も浮かばなかった時の“最初の一行が欲しい”という気持ちを詩にしました」
短歌の部
小林剛士さん(千葉・渋谷教育学園幕張高校3年)は「小銃の整備士だった祖父が今ゆっくり弾く慰霊のギター」で最優秀賞を受賞した。「ある瞬間の心情だけで世界を作りきれるところが短歌の魅力。普段から気になるフレーズが浮かんだら書き留めるようにしています」
優秀賞・原田千寿さん(福岡・西日本短期大学附属高校2年)の作品は「雨なくばきれいな虹も見られない涙も汗もいつかは虹に」。「将来のことを考えていて、やりたいことをやるには努力が大切だと思った。その時の心情を短歌にしました」
文芸部に所属する須磨優樹さん(群馬県立太田高校2年)は、「母は死に何を思うか避暑地なる牧場の柵を舐める仔牛や」で優秀賞を受賞した。「短歌の長さは思っていることを表現しやすい。あまり考えすぎず、浮かんできたことを素直に表現するようにしています」
俳句の部
池永桃子さん(埼玉県立浦和第一女子高校1年)は「古道抜け天に昇るは那智の滝」で最優秀賞を受賞。「家族旅行で見た光景をそのまま書いた。思い出を写真ではなく17文字にして残すのもいいなと思いました」
優秀賞を受賞した山下茜莉さん(福岡・西日本短期大学附属高校2年)の句は「未来地図無限に広がる夏の空」。「まさか自分が選ばれるとは。自分では“未来地図“という言葉が気に入っています」
三平萌絵さん(千葉県立安房高校1年)は「あったかい七種粥は母の味」で優秀賞を受賞。「でてくる言葉が字余りばかりで大変でした」
審査員による講評
【短篇小説の部】中村航氏(作家)
小説は、自分の知っていることではなく、知りたいこと、理解したいことを書くもの。作品のどこかに必ず描かれる過去・現在・未来を作者自身が考えることでもあります。
【現代詩の部】水無田気流氏(詩人)
「もっともらしく見える言葉」や「価値がありそうな言葉」にある意味抵抗するのが現代詩です。皆さんは詩の言葉を新しいイメージを創造するために使っていて見事でした。
【短歌の部】田中章義氏(歌人)
“自分だからこそ”のテーマを持ち、そこに逃げずに向き合っている作者の可能性を見いだしたい。最終的には「作者に会いたい」と思える作品を選出しました。
【俳句の部】佐川広治氏(俳人)
俳句にとって大切なことのひとつは不易流行。世相を反映した作品が数多く集まったが、単なる報告に終わらず、いかに自己投影できているかという観点で選句しました。
全国高校生創作コンテスト入賞者一覧
文学部(日本文学科・中国文学科・外国語文化学科・史学科・哲学科)
経済学部(経済学科・経済ネットワーキング学科・経営学科)
法学部(法律学科─法律専門職専攻・法律専攻・政治専攻)
神道文化学部(神道文化学科)
人間開発学部(初等教育学科・健康体育学科・子ども支援学科)
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