中学生、高校生を対象に武蔵野大学工学部数理工学科が募集する「数理工学コンテスト」。第10回目となる今回は、全国から53作品の応募があり、そのうち18作品が入賞を果たした。

次代を担う中学生・高校生たちが栄えある受賞

武蔵野大学工学部数理工学科では、データサイエンティストの育成を目指している。その一貫として、次代を担う中学生、高校生を対象とした「数理工学コンテスト」を2014年から毎年開催している。

「数理工学コンテスト」は、身近にある不思議な現象や興味深い事象を数理の力を使って解き明かし、発表する機会にもなっている。今回の「第10回数理工学コンテスト」では、全国の中学校・高校から53作品の応募があった。

3月23日(土)には、オンラインにて授賞式を開催。受賞者、選考委員が画面越しではあるが一堂に集まり、表彰および選考委員による入賞作品の講評が行われた。

オンライン授賞式での様子

選考委員評

武蔵野大学工学部数理工学科 教授 西川哲夫

課題設定が秀逸で、オリジナルな解決方法を駆使した作品が多く見られました

今回、最優秀賞を受賞したのは、クリアファイルを重ねてはさみで切った際、切断面が接着することに疑問を持ち、その原因を明らかにしこの現象の活用方法を見つけることを目的として実験と理論的な考察を行った作品です。身近な疑問から出発し、情報収集を十分行い、実験によって原因を確かめた上で理論分析によって考察を加え、その現象の応用を検討するという理想的な研究のあり方を示す作品です。

今回も、応募作の分野は多種多様であり、日常的・社会的なテーマの作品は7件、自然科学が5件、工学が4件、数学が2件ありました。研究方法についても多様で、モデル化や最適化を用いた作品が5件、統計、実験を用いた作品がそれぞれ9件、4件でした。今回は、課題設定が秀逸で、解決方法にもオリジナルな方法を駆使した作品が多く見られました。

優秀賞には、大規模なデータを自ら粘り強く収集し、ありきたりでない分析を行って、興味深い結果を得た作品(文化祭での人の流れの研究、魚の個体データから産地を判定する研究、盆地の気温と湿度から暑さ指数を分析した作品)が選ばれました。モデル化の方法では、実際の場面への応用を意識した作品、例えば、首都直下型地震を想定したSCU配置問題の最適化や、倒壊解析シミュレーションを行った作品がありました。科学の分野では、最近のクマの被害に着目し、人口密度の減少、森林面積の減少、地球温暖化と関連付けた作品や、豆苗栽培を短期間で行うための最適条件を求めた作品などがありました。工学分野では、風力発電でのプロペラの最適解を実験的に求めた作品、数学分野では、新たな立体パズルの開発などの作品がありました。日常的・社会的な分野では、杉並区で夜間AEDが使えない状況を明らかにした社会的意義が非常に高い作品、マスクの使用状況の変化を通勤電車での観察やアンケートで明らかにした作品などが選ばれました。

モデル化・統計・コンピュータ、及び大量のデータを活用したアプローチは、現実課題の解決には必須のものとなりつつあります。今後も、幅広い勉強・情報収集を続けながら、実践力を磨いていって欲しいと思います。

 

10回(2023年度)受賞作品一覧

最優秀賞(1作品)
クリアファイル切断時に断面が接着する原因の分析とその応用 
愛媛県立三島高等学校 
優秀賞(3作品)
文化祭における人の流れの分析
広島学院高等学校 
 
魚(チダイ)の個体データから産地(大分/青森)を判定できるか?
光塩女子学院中等科
 
地球沸騰化時代の大洲盆地の夏 -熱中症を防止するために- 
愛媛県立大洲高等学校
奨励賞(5作品)
首都直下型地震を想定した一都三県におけるSCU配置問題 
豊島岡女子学園高等学校
 
新たな立体パズルの開発 
西宮市立西宮高等学校
 
複数タイプの“歪み絵”を一度に出力するプログラムの制作~数学とプログラミングによる文化の再生と保存~
大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎 
 
倒壊解析シミュレーションによる筋交いの配置の効果 
兵庫県立宝塚北高等学校
 
ある日、人里でクマさんに出遭った~ なぜ人里で目撃されるクマが増えたのか?
光塩女子学院中等科
選考委員賞(5作品)
ボトルネックで起こる渋滞の解析 
広尾学園高等学校 
 
湿地に生息するセイタカアワダチソウの形態の変異について 
須磨学園高等学校 
 
風力発電におけるプロペラの最適解
市立札幌旭丘高等学校
 
ジャイロ効果の新たな活用法
西宮市立西宮高等学校
 
炎の通電作用 
広島三育学院高等学校 
ジュニア奨励賞(4作品)
豆苗栽培大作戦~短期間栽培での最良条件とは~
光塩女子学院中等科 
 
夜間にAEDが使えない!~杉並区の夜間使用可能なAEDを増やすには~ 
光塩女子学院中等科
 
「通勤時の乗降をスムーズに ~ドア横スペースと、ドア開閉時の乗降客の流れを分析~ 」 
東京大学教育学部附属中等教育学校
 
なぜ日本人はマスクを外せないのか ~通学電車での観察と女子中学生のアンケートから~
光塩女子学院中等科
 

大学ホームページに後日、優秀作品や選考委員による講評を掲載予定です。

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