映画「桐島、部活やめるってよ」での熱演が高く評価され、若手実力派女優として注目を集める松岡茉優さんは今春、高校を卒業したばかり。今も昔も明るい性格だが、実は友人関係に悩んだ時期があったという。(文・中田宗孝、写真・玉井幹郎)

幼いころから、いつも友達の輪の中心にいる元気な子だった松岡さん。しかし、高校1年時に転校すると、クラスの雰囲気にうまくなじめなかった。休み時間も一人で過ごすことが多かったという。

「いま振り返ると、周りが転校生の自分を好奇の目で見ているんじゃないかと意識し過ぎていました。私自身がみんなと距離を置いて、壁をつくっていたんです」

ちょっぴり息苦しかった学校生活を変えたのは、小さな出来事だった。「隣の席で話していた女の子同士の会話がとっても面白くて、つい笑ってしまったんです。彼女たちは私が笑うことすら意外だったみたいで『松岡さんが笑った……』って(苦笑)。だから『笑うよー!』って返したんです」

素の自分が出せるようになってからは、同級生との壁もなくなっていた。「授業も放課後も楽しくなって。一番の思い出はクラス一丸で模擬店を頑張った高3の文化祭ですね!」と、満面の笑みで話す。

学校生活と並行して芸能活動に取り組み、高校生になってからは女優の仕事が増えた。それでも卒業後の進路を考えると、「女優なんて無理……」と思ったという。

「自分が本当にしたいことは何だろうと、ずっと悩んでいたんです。そんな時、事務所のお芝居のワークショップ(講習会)に参加して、演技の楽しさに目覚めました。自分はお芝居が心底好きなんだと気が付いたんです」

つい最近まで高校生だったから、「将来の夢や、好きなことが見つからなくて悩む高校生の気持ちがよく分かる」と話す。「未経験のことに思い切って挑戦すると、自分を変えるきっかけになると思います。挑戦といっても大げさなことではなく、見たことがない映画を鑑賞する、聴いたことがない音楽を楽しむ、文学や芸術に触れてみる。そんな、ささいなことでいいんです。それがいい刺激になり、きっと自分の将来につながっていきますよ」

まつおか・まゆ 1995年2月16日、東京都生まれ。08年4月から10年3月までバラエティー番組「おはスタ」のおはガールとして活動。10年から本格的に女優として活動し、テレビドラマ「鈴木先生」などに出演。今年6月下旬からNHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演し、アイドルグループの熱血リーダー役を体当たりで演じる。 スタイリスト・中村剛、ヘアメイク・横山雷志郎