「和牛五輪」で究極の技 披露 岡山・新見高校 生物調査部畜産班 岐阜・加茂農林高校 畜産調教部
岡山・新見高校と岐阜・加茂農林高校の生徒たちが、牛の高度な調教に取り組んでいる。両校生徒は10月26日、長崎県佐世保市で開かれた畜産農家の全国大会で、究極の技といわれる「碁盤乗り」を披露し、大喝采を浴びた。( 文・写真 南隆洋)
大会は全国和牛能力共進会。5年に1度開かれる「和牛のオリンピック」だ。全国トップクラスの畜産農家ら約300 人が見つめる中、体重500㌔もの大きな黒毛和牛が、生徒たちの手綱さばきで導かれ、縦45㌢、横42㌢、高さ30㌢の碁盤の上に4本の脚を乗せピタリと静止すると、会場は「わーっ!」とどよめき、大きな拍手に包まれた。
出場したのは、新見高校生物調査部畜産班の西懸岳志部長(2年)ら5人と「ひなた号」(雌、9歳)。加茂農林高校畜産調教部の加藤未来部長(3年)ら5人と「はるみ号」(雌、3歳)。
新見高校では1996 年に古老から「碁盤乗り」を学んだ。同校を視察した加茂農林高校の安江清仁先生は、生徒の一生懸命な取り組みに感動。「教えてほしい」と申し出て、2010 年と今年3月、2度にわたって、生徒らは新見高校で研修を受けた。
加茂農林高校の生徒は、牛を大きな板の上に立たせることから始め、階段を付け、牛の後脚に手を添えて足運びを教えた。牛に自分の足を踏まれた生徒もいた。
3カ月がかりでついに成功したが、はるみ号は練習を1日休むと、碁盤台に見向きもしなくなった。再び基礎からやり直し。回復に約1 カ月かかった。
「はるみ、行くよお」。みんなで優しく声を掛け、毎日の世話を怠らないと、素直に動くことに気づいた。牛心伝心 生徒たちはキャッチフレーズをつくった。「牛心伝心」。「牛の心と私たちの心がつながって一つになったとき、難しい技もできるのです」と加藤さん。
演技終了後、岐阜県肉用牛協会の山村勇人会長から「君たちは岐阜県の誇りだ」と賞賛され、加茂農林の生徒の目から一気に涙があふれた。西懸君は「加茂農林がものすごくうまくなっているのに驚いた。新見の伝統が伝わりうれしい」と喜んだ。
和牛調教の伝統の技
昭和30 年代までは、和牛は田畑を耕したり、山から木材や炭を運び出したりするのに使役され、細い橋を渡り、足場の悪い所でも作業できるよう調教されてきた。しかし、そうした調教術が耕運機などの普及で消えてきた。岡山県新見地区はブランド牛「千屋(ちや)牛」の生産地で、ここで生まれた高度な調教術が全国をリードしてきた。新見高校は碁盤乗りのほか、細い橋を渡る「橋渡し」、前足をひざまずいてお辞儀する「敬礼」などをマスターした。