月の全国高校総体(インターハイ)で女子が団体総合優勝、男子も団体総合4 位という好成績を収めた東京(東京)陸上部。原動力となったのは、メンバーのけがを乗り越えてつかんだ女子4×100㍍リレーと男子4×400㍍リレーの優勝だ。
5月に男子チームの加藤勇司(3年)=神奈川・西原中出身=が、6月には女子チームの藤森安奈(3 年)=同・武山中出身=がそれぞれけがを負い、インターハイ予選を欠場。男女とも代走を立て、何とか本戦への出場権を獲得したが、チームには重い空気が流れた。この危機を救ったのは、メンバーの思いやりと仲間への信頼だった。
男子チームで、本番でも加藤の代役を務めることになった池田亮平(2年)=同・中野島中出身=は、プレッシャーに弱い一面を持っていた。その池田を支えたのは先輩たちだった。第3走者の大串卓也(3年)=同・宮前平中出身=は「自分の走りをすればいい」と励まし、部長でアンカーの田辺将大良(3年)=東京・第三亀戸中出身=は「俺たちがいるから安心しろ」と毎日勇気づけた。いつしか池田は「先輩たちを信じよう。加藤さんのためにも絶対やってやる」と思うようになっていた。
女子チームで負傷した藤森は「一人になるとつらかった。走ることを諦めかけたときもありました」と涙をこらえて振り返る。3年間苦楽を共にしてきたアンカーの中嶋瑞穗(3年)=同・鶴川中出身=は「絶対に藤森と優勝したい」という思いを胸にとどめ、けがのことは口に出さずに藤森を見守った。第1走者の鈴木夢桜(2年)=同・足立十四中出身=と、第3走者の高森真帆(2年)=神奈川・川崎有馬中出身=も同じ思いだった。
迎えたインターハイ本番、男子は3分12 秒15、女子は46 秒15 のタイムをはじき出して優勝した。男子チーム第2走者の清水勇也(3年)=東京・四谷中出身=は「加藤と池田のために走りました」と振り返る。本番の舞台で復活した藤森は「女子チームは全国で一番速くて、一番仲も良い」と胸を張った。仲間を信じて心でバトンをつなぐ。それが東京のリレーなのだ。(文・写真 東憲吾)